投稿エピソード#09
天理高等学校 新子菊雄先生/悲劇の物語と向き合って―
1987年東京《普門館》に於ける第35回全日本吹奏楽コンクール自由曲。
ソ連の作曲家プロコフィエフが、シェークスピアの戯曲「ロメオとジュリエット」に基づいて1935年に作曲したバレエ音楽。
クレッシェンドによる強烈なフォルティッシモの不協和音が威嚇する仲裁者ヴェローナ大公のテーマを表す「モンタギュー家とキャピュレット家」。
最もドラマチックで絶望感の極致「タイボルトの死」、そして両家のいがみ合いがもたらした、愛する二人の死の場面「ジュリエットの墓の前のロメオ」。
この最も感動的な三つの場面を選択しました。
特に3曲目の「ジュリエットの墓の前のロメオ」では二人の愛の清らかさ、運命の残酷さ、そして死によって魂が昇華される様を存分に表現しなければならず、私達には非常に高い壁でした。物語の主人公と同世代で、大人へと成長する多感な高校生達にどうしてもこの悲劇と向き合ってほしかったので、ストーリー通りこのシーンを最後に設定しました。
余談になりますが、当日私共の次の団体のトラックが間に合わないという全国大会では非常に珍しい出来事が有り、たまたま同じ自由曲でもあったので打楽器など一式をお貸しするために舞台に残して退場したことが懐かしく思い出されました。