第三回「光のソネット/福島弘和」「青のやまなみ/広瀬勇人」:出雲市立第一中学校・段 真大先生
いよいよ発売の迫る小編成レパートリーVOl.12「火の伝説」。
どんな作品? 聴きどころは? 演奏するときは何に気をつけるべき?
などなど、新曲の魅力・ポイントを現場の先生に紹介していただきます!
光のソネット/福島弘和
まず、冒頭の美しさに心惹かれ、私自身も何かの機会にこの曲を演奏してみたいという気持ちになりました。その後の速度や拍子の変化など、そのすべてが自然な流れの中で登場するため、違和感を覚えることなく気持ちよく音楽が展開していきます。
演奏可能な最少人数は24名前後とのことですが、さらに人数の少ないバンドでも工夫次第で十分演奏できるでしょう。アンバランスな編成で悩んでおられるバンドにとっても、良いレパートリーになるかもしれません。
また、中級以上のバンドが、コンクール等に向けて少し背伸びした楽曲の練習を始める前(オフシーズンなど)に、このような素敵な作品との出会いの中で基礎的な力を磨くのもよいと思います。合奏練習はもちろん、パート練習やセクション練習といった子ども達だけの活動場面でも、楽譜がシンプルな分、その時間の目的(「今日は○○のアーティキュレーションをみんなで確認しよう」「今日は○○のハーモニーを確認しよう」など)の達成度を実感しやすいと思います。
例えばリーダーがなかなか育たず、子ども達だけでの練習に苦手意識を有しているようなバンドは、この作品を通じ「自分達の力で効果的に練習を進めようとする集団」を育てるきっかけを掴めるかもしれません。
青のやまなみ/広瀬勇人
「音楽を楽しむのに人数は関係ない」小編成バンドを受け持っていた時に、いつもそう話していましたが、この作品はまさにこの言葉を音楽で証明する力を持っていると思います。たとえ50名であろうが、30名であろうが、8名(この曲の演奏可能な最小人数)であろうが、人数による優劣はもちろんなく、むしろそれぞれの人数だからこそ引き出せる味わいを追求できる作品だと思います。スコアに目を通しながら楽曲を聴き、その後作曲者の解説文を読みワクワク感が広がりました。編成や技量に強く制限されることのないコンサートピースの一つとして大切に演奏され続ける楽曲になると思います。
私は音楽科教員ですが、この曲は作品に対するイメージや情景を自由に想起しやすく構成も明快であるため、授業では大切にしているのに部活動になるとつい置いてけぼりにしがちな「知覚・感受→表現」のプロセスを改めて見直し、そして合奏に生かして本当の意味で主体的に吹奏楽・楽器を楽しめる子どもを育てる一助にもなるのではないか、と日々の反省を踏まえながら考えています。
◆作曲家、広瀬勇人さんによる楽曲解説より◆
この曲は2018年、明照学園 樹徳高等学校吹奏楽部(群馬県)の第35回定期演奏会委嘱作品として作曲され、同演奏会で作曲者の指揮によって初演されました。
山の様々な表情や情景を描いたもので、起承転結の4つの部分が切れ目なく演奏されます。冒頭部分はなだらかで柔和な山並みの様子を描いたもので、テンポが変わり6/8拍子になる箇所では、一匹の鳥が険しい断崖沿いに飛んでいくと共に雨が降り出し、激しい雨嵐が山を襲います。3/4拍子では雨が上がって雫が滴る、しっとりと静かな山の情景を描き、最終部分では再び日差しが戻り、新緑豊かな山の美しさが際立つ景色を描いています。
段 真大(だん まひろ)
島根大学教育学部卒業、同大学院教育学研究科修了。声楽を吉田功氏に師事。中学校の音楽科教員として吹奏楽部顧問を歴任し、大田市立第三中学校では2009年にわずか7名で全日本吹奏楽コンクール中国大会に出場し、金賞を受賞。2014年より出雲市立第一中学校に着任し、全国大会5年連続出場、うち2回金賞を受賞している。
(出雲市立第一中学校・段 真大先生)