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♪詳細情報♪
編曲:中橋愛生(Yoshio Nakahashi)
演奏時間:8分00秒 (約)
グレード:3.5
主なソロパート: Picc. / Fl. / Ob. / B♭Cl. / S.Sax. / A.Sax. / Trp. / Trb. / Euph.
編成:吹奏楽
▼楽器編成▼
Flute (3 players~)
Oboe (1 player~)
Bassoon (1 player~)
Contrabassoon (opt.)
E♭Clarinet (opt.)
B♭Clarinet (6 players~)
Bass Clarinet (1 player~)
Contrabass Clarinet (opt.)
Soprano Saxophone
(1 player~)
Alto Saxophone (2 players~)
Tenor Saxophone (1 player~)
Baritone Saxophone
(1 player~)
Horn (4 players~)
Trombone (4 players~)
Euphonium (2 players~)
Tuba (2 players~)
String Bass (1 player~)
Piano (opt.)
Percussion ※5 players~
Bass Drum
3 Tom-toms
Crash Cymbals
Suspended Cymbal
Triangle
A pair of Wood Blocks
Glockenspiel
Xylophone
Vibraphone
Marimba
Tubular Bells
♪楽曲解説♪
「渡部謙一プロデュースによる21世紀のための新しい吹奏楽作品」企画により、福島県原町第二中学校吹奏楽部の委嘱で2005年に編曲。題材は委嘱元からの提示。 原曲はクルト・ワイル(1900-1950)の「三文オペラ」。奇妙な編成(管楽器を主体とし、バンジョーやハルモニウムなども含む)のオーケストラを伴う23のナンバーから成るオペラである。
このオペラはドイツの詩人・劇作家であるベルトルト・ブレヒト(1898-1956)が18世紀初頭のJ.ゲイ「乞食オペラ」(ペープシュ作曲)を基に現代風に翻案して新たに台本を作成したもの。このオペラは様々な下積みの人々と警察権力とを対比させることによって社会的矛盾を暴きだす、という極めて社会性の強い作品である。このオペラからワイル自身が数曲を抜粋して管楽アンサンブルに編曲したのが「小さな三文音楽」として知られるもの。
この「小さな三文音楽」の作成に際し、ワイルは敢えて「チープな響きがするように奇妙な楽器編成で、音の配置も鳴りにくいよう」にしている。これは「オペラ」というブルジョワジーの象徴とも言える形態に対する、ワイルの皮肉であろう。それを、大編成の吹奏楽に編曲することが果たしていいことなのか。悩んだ末に、敢えて過剰なまでに派手になるように手を加えて、その意図を逆照射することにした。結果として、原曲にはない音がたくさんあり、虚しいほどドラマティックに鳴る、いわば「豪華な三文音楽」となった。
この編曲は「三文オペラ」をベースにしており「小さな三文音楽」は解釈の参考とした程度。 「序曲 (Nr.1)」→「代わりに、の歌 (Nr.4)」→「大砲ソング (Nr. A7a)」→「メロドラマ (Nr.11)」→「マッキー・メッサーの殺人物語大道歌 (マック・ザ・ナイフ/Nr.2)」→「第三の三文フィナーレ (Nr.20)より冒頭とコラール」が切れ目無く演奏されるメドレーとなっている。 実は「三文オペラ」と「小さな三文音楽」では同じ曲でもアーティキュレーションやフレージングが異なっている。また、ワイル自身の楽譜の書き込みは大雑把なもので、細かいところに疑問が残るものであった。そこで、様々な異版を比較検証しつつ、私の解釈を交えてアーティキュレーション等を定義しなおしている。
テンポ指定はメドレーとした際に最適と思われた編曲者の解釈によるが、参考としてワイル自身の指定テンポも[org.]として付している。
編成は編曲者が最適として考えたもの(できればoption楽器も加えられるのが望ましい)である。しかし、編曲の特性上かなり厚めのオーケストレーションとなっているため、バンドの実状に合わせて重複している音やソロを他の楽器に割り当てることで、指定よりもかなり小さな編成で演奏することも可能である。 逆に、FluteやOboeの音域が低いところではAlto-FluteやEnglish-Hornを、「メロドラマ」でPianoなどの代わりにHarpやCelestaを、「大砲ソング」で実際に大砲を使用したりすることで、より「豪華」にするのも面白いだろう。
演奏に際しては「小さな三文音楽」と「三文オペラ」の両方の原曲を参考にして、器楽と声楽との差異や共通点を意識し、1つひとつの音のニュアンスや身振りを熟考してほしい。
(中橋愛生)