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♪詳細情報♪
編曲:田村文生 (Fumio Tamura)
演奏時間:15分00秒 (約)
グレード:5
主なソロパート: Fl. / Hrn. / Euph.
Trp最高音:1st:High C / 2nd:As / 3rd:G
編成:吹奏楽
▼楽器編成▼
Flute 1 & 2
Alto Flute
Oboe
English Horn
Bassoon 1 & 2
E♭Clarinet
B♭Clarinet 1(div.), 2 & 3(div.)
Alto Clarinet
Bass Clarinet
Contra-alto Clarinet
Alto Saxophone 1
(doub. Soprano Saxophone)
Alto Saxophone 2
Tenor Saxophone
Baritone Saxophone
Trumpet 2 & 3
(doub. Flugel Horn)
Horn 1, 2, 3 & 4
Trombone 1 & 2
Bass Trombone
Euphonium (div.)
Tuba (div.)
String Bass (div.)
Harp
Percussion ※4 players~
Bass Drum
Crash Cymbals
Suspended Cymbal
Tam-tam
Triangle
Tambourine
Glockenspiel
Xylophone
Vibraphone
Marimba
Chimes
♪楽曲解説♪
アレクサンドル・スクリャービン(1872-1915)の創作期は、おおむね3つに分けられる。それはショパンの残像と後期ロマン派の耽美的傾向の色濃い作品の初期、伝統的な調性音楽から逸脱を始め、色彩と音の統合を試みた「プロメテウス」に至る転換期(中期)、そしてその後の無調期、という3区分である。
この作品は、スクリャービンの中期に属するピアノソナタ第5番op.53(1907)を吹奏楽のために編曲したもので、タイトル「おお、神秘なる力よ!」は、彼がこの曲に添えた《法悦の詩》の一節(以下)から転用したものである。
~私はお前を生へと招く、おお、神秘なる力よ!
創造の精神の模糊とした深みに沈む、生の怯えた影よ
私はお前に、大胆なるものをもたらそう~
音楽学者ジェイソン・ステルは、この作品の音響的基礎となるバス声部(低音部)の移り変わりに着目し、上記の《法悦の詩》の一部、及び曲中に記された表情記号から抽出した言葉を、音楽の進行とスクリャービンが傾倒していた神智学的諸段階に当てはめ、循環する構造を見出した。
無 - 夢想 - 創造的精神 - トランペットの如き威厳 - 霊的情熱 (→無)
非常に混沌とした無調的な部分である「無」から開始し、5つの段階を経て再び回帰するという過程は、この作品の大まかな3つの部分(提示部・展開部・再現部)それぞれに当てはめられる。(中略)明瞭さと不明瞭さ、前進と停滞を行き来しながら、この曲は進行してゆく。しかし音楽を構成する要素は、音強、細かさ(荒さ)、音色なども重要であることは言うまでもない。
この作品のクライマックスにおいて、圧倒的な音量、極端な音域、極度に細かいテクスチャーが提示されるが、それは「夢想」「霊的情熱」の極限的なものとして解釈できるのかも知れない。しかし一方で、その旋律的、和声的側面は非常に単純でもある。実際、最初の「夢想」で提示された旋律の断片は、驚くべきことに、それ自体は何の変化・発展すること無く、全くそのままに現れるのだが、ここにおいて、何らかの「発展」を伴う伝統的な旋律や調の扱いは、もはや無力であることを物語っているのかも知れない。
(田村 文生)