クラリネット4重奏：超絶技巧練習曲 第八番「瞋恚之炎」（しんいのほむら）／阿部勇一【アンサンブル楽譜】

　この曲は2017年、長崎県のアルビオン・クラリネット・ヴァリエにより委嘱、同年12月に初演されました。

　瞋恚之炎とは燃え上がる炎のような激しい怒り・憎しみ、または恨みを表します。この「瞋恚」とは仏教において、三毒とよばれる煩悩の一つであり、単に怒りそのものではなく怒りによって生まれる憎悪や嫉妬、更には不安などの負の感情を指します。

　冒頭は物憂げな不安な雰囲気ではじまり、徐々に動き出します。突然テンポアップし、感情の炎が激しく揺らめきます。その後も緩急を繰り返しながらも全体としては次第に緊張感が高まっていきます。安定した響きと不協和音、tuttiとsolo、スタッカートとスケールまたはロングトーンが、めまぐるしく変わったり同時に発生したりしますので、それぞれのイメージをはっきりさせメリハリのある演奏をすることで、表情豊かで面白い演奏になります。弱奏の部分でも情緒的になりすぎず一定の緊張感を保つことが大事です。曲のテーマに合った演奏を心掛けて下さい。