サクソフォーン5重奏：イロンデル［燕］ ～ for Saxophone Quintet／光田健一【アンサンブル楽譜】

ジーグあるいはクーラントのような古風な舞曲テイストのイントロダクション。新たなる旅立ちを前に、背筋が伸び、心が踊るも、想いの整理がつかない瞬間でもあるだろう。

準備段階を経て、心を決め、一気に飛翔する。単純に下がって上がる、シーソーのような動きのモチーフをソプラノが奏で始め、それをひたすら延々と、５者がリレーのように伝え渡していく。高度をグッと上げ、空高く、ちっぽけな自分たちの生き様を俯瞰で振り返って見ると、ひとの想いも世の現象も、全て一元的でも平面的でもないことを知る。

ミニマル的リフを背景に、モチーフの反行系をバリトン、テナーの２重奏で過ぎ行き、後に現れるセンチメンタルなソプラノのモチーフ音型が、張り詰めた心に感傷的な追憶感を思い起こす。やがて音楽は世界の国々と歴史を包括し、時間軸もXY座標もわからなくなって、空間に放り出される。

再現部からも上昇気流は加速し続け、シンフォニック度も強まって、そのまま解き放たれるようにエンディングに突入。最後はクラスター気味のカオスで幕となる。

素晴らしい演奏技術と心意気で録音を残して下さった、サクソフォン５重奏ユニット「COLORS」の５人のヴィルトゥオーゾ・ツバメの皆さんに、心の底から感謝したい。

(光田健一)