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『女声合唱版初演プロジェクト・リレーコラム』第5回:特別対談 その①

『太陽と海と季節が/女声合唱版』。初演までのあれやこれやを、作曲の森山さん&指揮者の石橋さんに綴っていただくリレーコラムの第5回はついにお二人が対談!
2025年4月4日

2人の接点

森山:実はこの企画でお会いするまでお話ししたことが無かったんですけど、石橋さんのことは存じ上げてました。確か最初は22 年の東京国際合唱コンクールですね。そこで指揮なさってるのを見ていて。

石橋:そこだったんですね!23 年の東京都のコンクール審査かと思ってました。

森山:そうですね、審査もさせていただきました。変な講評を書いてなければいいんですが…(笑)

石橋:いえ、大丈夫です(笑)。嬉しい内容でした(笑)。

―石橋さんの印象は?

森山:構えの大きい音楽作りをされる方だなと。お若いんですけど、自分の何かを見せつけてやろうというのではなく成熟した音楽が出てくるというか。何でこの歳でそんな音楽になるんだろうって。

石橋:僕が森山さんを知ったのは「受付」(註:平成23年度合唱組曲作品公募入選作品《第22回朝日作曲賞》「さよなら、ロレンス」四元康祐 詩/森山至貴 曲)ですね。課題曲だった2012 年に高校3年生でした。中学まで野球一筋だったのがケガなどで断念して、何しようかなって迷っていた時に部活紹介で聴いた合唱部の歌声が刺さって。それからどハマりして3年目の頃。その時は別の曲が選ばれて歌えなかったんですけど。

森山:出版社の方との企画打合せで、初演をどうしようかという話になったのですが、私はあまり接点のない方が良いなと思ってまして。そうしたら担当の方から石橋さんのお名前が出て。ああ、もう是非という感じで。

石橋:有難うございます。楽しそうなお話だなと思って、2つ返事という感じでした。実はこれまで森山さんの曲を演奏する機会がなくて。今回すごく楽しみでした。

混声版と女声版

石橋:鈴優会さんの素晴らしい初演とか、その他にもたくさんの演奏を聴いて混声版の良さも勿論すごく感じたんですけど、楽譜を眺めながら、これ絶対女声にも合う曲だと思って。詩の持つ透明な語感というか世界観と女声合唱のすっきりした、遠くを見渡すような響きが絶対合うな、素敵な演奏ができるやつだなこれはって。メロディも魅力的です。女声だとそこを意識して音楽を作りやすいので、より前面に出るかなと思います。

―書き手としてはいかがでしたか?

森山: そうですね。編成は曲の大前提なので、そこが変わるのはなかなか難しいです。しかもこの曲は混声4部でディヴィジョンもなくすっきりした音にすることをかなり意識して書いたので、女声3部で同じスタイルを踏襲するために色々と悩みどころはありました。ただ、今おっしゃっていただいた通り女声にするとメロディが横に流れていく魅力が引き立ちやすいので、そこを汲んで演奏してくださるのは有り難いです。

石橋:あと、これは編成とは関係ありませんが、森山さんが高野民雄さんの詩集から選んで組曲を構成されて、高野さんもこれしかないと思ったというお二人の対談を拝読していて。だから、4曲それぞれどう演奏するかっていうのも勿論あるんですけど、全体に通底する流れのようなものを大切にしたいなと思ってます。

お気に入りの箇所

石橋:実はここ気に入ってる、っていう箇所はありますか?

森山:それで言うと、3曲目の「林の中を風と歩く」ですね。成熟した人が歌うとハマる感じの曲になったんです。元々、自分の人生経験が曲に投影されるという感覚があって、だから例えば自分より20歳上とか、経験量の違う人に寄り添う曲はなかなか書けないなと思ってました。でも初演してくださった鈴優会さんは年上の方が多かったので想像しながらどうにか書いたら、詩の力や世界観もあってですが、実際よりも少し成熟した自分で書けた、みたいな充実感があって。

石橋:ちなみに書かれた10 年前はおいくつだったんですか?

森山:30歳とかですね。

石橋:僕いま30です。そんな一致が…。それでこれは取ってつけたように言うわけじゃなくて、本当に団員のみんなにも言ってたんですけど、僕3 曲目が一番好きなんです。4曲とも好きなんですけど、3曲目がダントツで…(笑)。4曲目は終曲だしクライマックス感のある作品で、 1曲目も溌剌として明るいニュアンス。2曲目の「海の記憶」も、ラストは「地球の向こう側へ」って大きな世界観で、遠くを見渡すようなdurの響きで終わっていくところから、その後の3曲目は急に歩調が変わって視点もミクロになるというか。それまでとちょっと違うんですよね。この2曲目から3曲目への移り変わり、流れも素敵で。あと後半、piu mossoでテンポがちょっと上がって歩調が変わって、風が遊びに来て気分も乗って、みたいなところがいいですよね…。とても好きです。

森山:良かったです。ちなみにちょっと雑談になりますけど、合唱曲って木に関する曲たくさんありますよね。一本の木から森までモチーフになってる。でも、木でも森でもなくて、林じゃないとだめな曲がある。ちょっと勝手に言わせていただくなら「林系合唱曲」ってあるなって(笑)。たぶん林って言葉に詩人が込めたいイメージがある。そういう独特なイメージ喚起力が林にはあって、そんな詩でこそ書ける曲があるのかなと。この3曲目もそれだなって思ってます(笑)。

石橋:「林系合唱曲」、ありますね。わかる気がします(笑)。

森山:石橋さんは音楽の成熟した側面を引き出すのがすごく上手な方だと思っているので、この3曲目をどう演奏してくださるか、とても楽しみです。

対談は第6回コラムに続きます!
次回は4月11日公開予定!お楽しみに。

女声合唱ぱるらんど 第1回定期演奏会

2025年4月19日 @国立オリンピック記念青少年総合センター 大ホール

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