『女声合唱版初演プロジェクト・リレーコラム』第4回:女声版の魅力/石橋遼太郎
指揮者の石橋遼太郎です。
今回は、初演させていただく作品の内容についてお話ししたいと思います。
組曲「太陽と海と季節が」は、「壮大な情景」と「人の心の機微」が美しく交差する作品です。
詩を見渡すと、太陽も、海も、風も、時に「私」に寄り添い、ともに語り合い、すべてを受け入れ、背中を押してくれる。そんな優しく美しい応援歌のような魅力を感じます。
演奏にあたっては、その魅力を表現するための音色づくりにこだわりました。単語ごとに都度異なる声を作るのではなく、作品全体に通底する、爽やかでシンプルかつ透明で、それでいて前向きな音を探しました。
あまりその場その場の感情表現や技巧に頼りすぎず、まっすぐに遠くを見つめるような世界観が表現できていれば嬉しいです。
また、もともとは混声合唱のために作られた組曲ですが、今回は女声合唱ならではの魅力を引き出したいと考えています。混声合唱と女声合唱では、その響きの特性が異なります。たとえば、p(ピアノ)の柔らかく繊細な表現や、透明感のある時間の演出は、女声合唱ならではの美しさといえるでしょう。(個人的にはこうした特徴がこの作品の世界観に非常にマッチしていると思うので、初演後もどんどん歌われていくと思っております!)
組曲の中で、個人的に特に好きな箇所をひとつ挙げるなら、2曲目「海の記憶」から3曲目「林の中を風と歩く」へのつながりです。「海」「水平線」といった広大な世界を見渡した後、ミクロな「林の中の私」へと視点が切り替わる瞬間。少しちっぽけで、点のように感じられるゆったりとした歩みが描かれますが、次第にピアノパートが16分音符で風を歌い、私と語り合う…。組曲全体の中でも、足取りの変化を楽しめるポイントです。
全体の構成としては、1~3曲目までの「自然との戯れ・対話」から、終曲「一日の終わりに」へとつながっていきます。私のどんなに自由な自然の遊泳も、最後には肯定しエールを送ってくれるようなストーリーとして組み立てられているのです。
この作品は「女声合唱団ぱるらんど 第一回演奏会」の最終ステージに歌われます。昼に始まる公演のすべてを聴いていただいた後、ホールを出て、夕暮れの中で「いい一日だった」と思ってもらえたら嬉しいです。

練習中の女声合唱団ぱるらんどの皆さん
次回は4月上旬公開予定!お楽しみに。