大変わかりやすくドラマティックな構成と親しみやすい旋律を持ち、４月に迎えた新入生も上級生も共に楽しめる作品となっています。作曲者によれば、かつて日本でも盛んに演奏された、作曲家スウェアリンジェンへのオマージュとして書かれ、タイトルも ”Swearingen” をもじり、かつニューフェイスのデビューといった意味も込められているそうです。演奏者全員が様々な形で活躍でき、演奏の喜びを感じることができると思います。

洛北、葵とくれば葵祭、あるいは源氏物語の葵上。平安の都の風情、人々の織り成す人間模様などが幻想的かつ重厚に描かれた力作だと思います。演奏上のポイントは、締め太鼓、中太鼓、神楽鈴(スコアではSleigh Bell)、拍子木(スコアでは Claves) などの和楽器の使用と奏者の数(いずれも難易度は高くないです)、それと中間部の笛(スコアではFlute) のSolo でしょうか。また音の厚みはある程度必要なので、最少でも20～25人は必要でしょう。技術的には難しくないですが、オーケストレーションの良さと楽器法の巧みさが助けてくれるので、演奏効果は大きいと思います。

タイトル通り明るく透明感のあるサウンド、さわやかな風を思わせる軽妙な木管楽器の動きがとても印象的で魅力的です。最低9人から演奏可能で、音楽する喜びをたっぷり表現してほしいとは作曲者。打楽器は４パートで書かれていますが、ティンパニとサスペンダーシンバルを兼ねて演奏すれば、一人でも大丈夫です。少人数でも演奏効果は充分で、コンサートのオープニングなどに最適だと思います。春に向かっていく中で取り上げてみたいですね。

前作「生命のアマナ」の続編として書かれ、疫病の苦難を乗り越え明るい未来へ向かう音楽。前半では、コロナに対する沸々とした思いや情景、中間部では愛らしいアマビエと大切な人への愛の形、後半部では苦難を乗り越え全ての事が好転していくという願いが込められているそう。技術的にも歯ごたえがあるが、最小演奏人数は22名とやや多めです。またクラリネットパートが重要な役割を担っているので選曲の際のポイントになりますね。ソロはフレキシブルで書かれているので、バンドの個性は出せると思います。特に後半のエキサイティングな部分はとても魅力的で、コンサートはもちろん、コンクールにも効果的だと思います。

「おーり とーり」とは八重山諸島の言葉で、「いらっしゃい」を意味し、かつての作品「道祖神の詩」のパート２という位置づけの曲だそうです。明るい陽光を思わせるサウンドを産み出すオーケストレーション、美しいメロディーライン、15名前後のバンドでも充分な演奏効果が得られるように書かれています。さすがスクールバンドを知り尽くした作曲者ならではの1曲ですね。コンサート、コンクールで豊かな音楽表現を追求したいバンドにお勧めです。

旋法の異なる3つの性質を 「Triedre」(3面体) になぞらえて作られています。第一曲はファンファーレ的に始まる威風堂々たる行進、2曲目は修道士たちの合唱が聞こえてきそうな、まるで中世の教会を思わせる効果的な教会旋法。3曲目はシンフォニックでもあり、ジャズ風でもありといった、まさに天野ワールド。難易度は若干高めだが、15～20名程度でも演奏可能です。だが、演奏人数や楽器など必ずしもスコアに固執せず、工夫を凝らすことで多様な演奏が可能になるのが天野作品の良いところ、面白いところでもあるので、オリジナリティー溢れる演奏を皆さんに期待したいです。

数あるフォスター曲集の中で、一番素敵なアレンジだと思います。フォスターの美しいメロディーもさることながら、グレインジャーのスタイルを意識したという、数々の輝きを放つ声部がとても効果的に散りばめられています。10人前後で十分に効果的な演奏ができ、技術的な難易度も高くないので、その分音楽表現や各パートのアンサンブルに重点をおくことができ、音楽の豊かさ、楽しさを実感できると思います。コンサート、コンクール、練習曲など様々な場面に適していると思います。

アメリカの赤十字社を設立し、南北戦争でも看護師として献身的な働きを行ったクララ・バートンの生涯をドラマティックに描いた作品です。作曲者の今までの作品同様、テーマ性・メッセージ性に優れ、感情や情景の描写がきめ細やかで、小説や映画の世界に引き込まれてしまったかのような感覚を憶えます。そんな感動的な曲でありながら、スコアにオプション楽器をうまく散りばめることで、少人数から多人数まで様々なバンドに効果的な演奏が可能になる、注目の一曲です。