フレキシブルを楽しもう! ~動物の謝肉祭~(前・島根県大田市立第一中学校 角国孝広先生)
皆さん、こんにちは。
本校はかつて部員数50名を超え普門館で活躍したこともあるバンドでしたが、現在は少子化の波を受け、常に40名前後を推移する状態となっています。
特に冬季になると1・2年生での活動のため、さらに人数が減ってしまいます。
加えて、学級の日直や委員会活動、インフルエンザ流行、部活動ガイドライン…メンバー全員が揃って活動できる日も限られてしまいます。
そんな中で試行錯誤の日々ですが、「動物の謝肉祭」を活用し、人数や編成をフレキシブル(柔軟)に工夫して活動した事例をご紹介します!
<プロローグ>
遡ること昨年の秋。2学期がはじまり、そろそろ新チーム(1・2年生)が最初に取り組む曲を考えなければと思っていたところ、新譜として「動物の謝肉祭」が登場したことを知りました。過去3年間後藤洋先生編曲の「となりのトトロ」メドレーに取り組んで来ましたが、今年は親しみやすいクラシック作品ができたら・・・と考えていたので、これだ!と思いました。
<初ステージは3日間の準備>
10月の終わりに2年生に部活動運営が引き継がれました。
11月の頭から新チーム(1・2年生)での活動です。運営組織が安定する間もなく地元イベント依頼演奏(歌謡曲等数曲)を一つこなし、続いて市全体の小中学校が一堂に会する音楽会の準備をはじめました。その音楽会ではオープニング演奏(ファンファーレ)、エンディング演奏(全体合唱の吹奏楽伴奏)の担当もあり、"動物の謝肉祭"にかけられる時間は1日1時間×3日のみ。
そこで、いくつか工夫しました。
◆演奏する小節を最小限にし、練習個所を減らす
◆演奏技術が難しい部分は簡略化する、または上級生が頑張る
◆演奏全体を盛り上げるために、適宜、打楽器パートを管楽器奏者が手伝う
◆オーケストラの弦楽器のように同じパートのメンバーが塊となって座る
(さらにプルトのように表が2年生、裏が1年生と配置して2年が演奏のモデル的存在に)
<次はアンコン>
何とか初ステージを終えると、期末テスト勉強のためしばらく部活動は休止です。
次の本番は地元のクリスマス・イベント演奏、そして県アンサンブルコンテスト。 島根県では現在、各団体2チーム出場枠があります。本校ではこれまで部の代表として打楽器とサックスが出場していましたが、昨秋はサックス奏者が2名となったため同属での演奏を諦め、従前のパートに加え、できるだけ多くの生徒が舞台経験を得られるようにと考え、フレキシブル楽譜の「編成の自由さ」を最大限活用し3チームを編成しました。チーム名を学校名の"大田一(ODI)"にちなんで、チームO、チームD、チームIとしました。
チームO | チームD | チームI | |
---|---|---|---|
パート1 | FL(2年) | FL(2年) | FL(1年) FL(1年)* |
パート2 | CL(2年) | AS(1年) | CL(1年) |
パート3 | CL(2年) | TP(2年) | TP(1年) CL(1年)* HR(1年)* |
パート4 | HR(2年) | TP(2年) | TP(1年) HR(1年) |
パート5 | EU(2年) | TB(2年) | TB(1年)* TB(1年)* EU(1年) |
パート6 | BS(2年) | TU(2年) | TU(1年) |
打1 | PC(2年) | PC(1年) | TB(1年)* |
打2 | PC(1年) | FL(1年) | TB(1年)* |
打3 | CL(1年)* | ||
ピアノ | HR(1年)* | ||
8人 | 8人 | 11人(*=兼務) |
アンコン県大会にはチームOとチームDが出場しました。
チームIは地元クリスマス・イベントで演奏を披露しました。
チームOは、木管の響きを生かして
チームDは、金管の響きを生かして
チームIは、すべてのパートが充実していることを生かしていくこととしました。
また、アンコンは制限時間が5分間ということで担当曲を振り分けることにしました。
チームO 序奏&ライオンの行進 ⇒水族館 ⇒終曲
チームD 序奏&ライオンの行進 ⇒化石 ⇒終曲
※内容は同じですが、部屋によって印象が違うと思います・・・。
<アンコンで育った力を集めて~大田吹奏楽祭にて演奏>
アンコンでは、チームごとに練習を工夫したり、指揮者のいない中での音楽づくりだったり、ソロのような時間帯が多くあったりと多くの学びがありました。
さて、アンコンが終わると、例年冬季練習用の合奏曲に取り掛かるのですが、今回はせっかく全員で取り組んだこの曲を再度合奏の形で披露することにしました。前回は3時間の練習で本番でしたので個々の技術に不安がありましたが、その点では安心することができました。しかしながら、時節柄、インフルエンザの流行により部活動休止状態が続き、本番前日しか練習ができないという事態に…。新たな合奏曲に取り組めなかったので、結果的にフレキシブルの譜面で助かりました(笑)。
<エピローグ>
アンコンの時期はどうしても寒さから体調を崩したり、インフルエンザ等流感により出席停止になったりとメンバーが揃いにくくなりがちです。そんな時にチームIのメンバーがアンコン出場チームの練習にエキストラ参加してくれました。
出場メンバーはイメージをもって練習しやすいですし、エキストラで入るメンバーは程よい緊張感の中で自分の力を試す機会になったようです。バンド演奏の際にはアンコンで使用できないピアノや追加の打楽器パートを補うことでアンサンブルとはまた違った楽しみ方ができたと思います。
これからの時代は限られた時間での練習で本番を迎えることが多くなると思います。質の良い曲(教材)を効果的に利用していきたいですね。
この曲はユニゾンあり、全音階・半音階あり、装飾音やトリルあり、長短のハーモニーあり、一通りのアーティキュレーションを伴ったフレーズありのステキな曲です。打楽器も標準的なものがすべて登場させることができ、演奏経験を積むことができます。現在、カンガルーや象など新たに自分たちで編曲したものを追加したのですが練習時間がなく、演奏が実現していません(笑)ぜひ、自分たちのバンドにあったフレキシブルを楽しんでいきましょう!
【編集部 記】
コラム掲載を受けて、急遽2019年3月27日のコンサートにて再演していただきました。
このメンバーによる最後の動物の謝肉祭です。
是非ご覧ください。
(前・島根県大田市立第一中学校 角国孝広先生)