
宅配スコア閲覧
楽曲詳細情報
- 作曲
- 田村修平(Shuhei Tamura)
- 演奏時間
- 8分00秒(約)
- グレード
- 4
- 主なソロパート
- Picc. / Fl.
- Trp.最高音
- 1st / As (high C) 2nd / As 3rd / C
- 演奏最少人数
- 25名
- 編成
- 吹奏楽(小編成)
楽器編成
- 1st Flute
- 2nd Flute (doub. Piccolo)
- 3rd Flute (opt.)
- Oboe (opt.)
- Bassoon (opt.)
- Clarinet in E♭(opt.)
- 1st Clarinet in B♭
- 2nd Clarinet in B♭
- 3rd Clarinet in B♭
- Bass Clarinet
- 1st Alto Saxophone
- 2nd Alto Saxophone
- Tenor Saxophone (doub. Ocean Drum)
- Baritone Saxophone
- 1st Trumpet
- 2nd Trumpet
- 3rd Trumpet
- 1st Horn in F
- 2nd Horn in F
- 3rd Horn in F (doub. Ocean Drum)
- 4th Horn in F (opt.)
- 1st Trombone
- 2nd Trombone
- 3rd Trombone
- Euphonium
- Tuba
- String Bass (opt.)
- Timpani
- 1st Percussion
- Suspended Cymbal
- Vibraphone
- Triangle
- 3 Tom-toms
- Wind Chimes
- Slapstick
- 4 Wood Blocks
- 2nd Percussion
- Wind Chimes
- Bass Drum
- Snare Drum
- Suspended Cymbal
- Crash Cymbals
- Tam-tam
- Cowbell
- Bongo
- Slapstick
- 3rd Percussion
- Tam-tam
- Glockenspiel
- Triangle
楽曲解説
2018年、ブレーン株式会社の委嘱により書き下ろした。
私はこれまでにも多くの"海"を題材とした作品を書いているが、今回は委嘱にあたって担当の方より「村上水軍をテーマにするのはどうか」といったご提案を頂いた事を契機に、本作を書き下ろすこととなった。
村上水軍は日本の中世(14~16世紀頃) 、瀬戸内海域で活動した水軍、いわば海賊衆である。実際、当時の言葉では「村上海賊」や「海賊衆」と呼ばれていた。日本の海賊、というとなかなか想像し難いが、空路などは当然存在しない時代のことであり、海路は陸路と並ぶかそれ以上の輸送手段・戦術的な交通路として非常に重要で、潮の流れや航海術を熟知する海賊衆は各地の有力大名にも重要視されていた。
海賊というと、現代の我々からは悪行の限りを尽くす集団、あるいはアニメや漫画に代表される人間離れした英雄像を思い浮かべるが、当時の日本における水軍は「海の民」といった印象が強く、往来する船から通行料を徴収する代わりに海上警護を行ったり、平時には漁業を行ったりと現代から想像する以上に文化的な活動を行っていたようである。ただし、戦時には陸の大名と結んで海上封鎖の実施や海戦の要となるなど政治的な関わりを陸と持ち続けていた。戦闘中には太鼓やほら貝の合図で海上の戦闘隊形を整え、巧みな操船術で海戦に不慣れな陸の武士たちを翻弄したそうである。
村上水軍に関しては中国地方を中心に勢力を築いた毛利氏や伊予国の河野氏との関わりは長く続いたが、特定の大名へ対し永続的に従属するというよりは政治的な駆け引きの中で独立及び中立の立場を保つことも多かったようであり、未だにその実態に関しては多くの謎が残っている。
さて、本作はそのような題材を前提に書き下ろした作品ということもあり、曲の中に現れる太鼓やほら貝のようなパッセージは当時海原に響いたと思われる水軍の音楽や楽器にヒントを得たものではあるが、史実だけに基づいた音楽ではなく、残る記録から想像する一種の英雄像、人間像を私個人の憧れを加えて反映した音楽としてみたく思った。日本の中世から現代まで変わらず、大半の人々は組織や有力者に従属しその生きる術を得てきたが、彼ら村上水軍は海の上で奔放な生活を送る反面、自らの信念や今日明日を生きる糧の重さを我々以上に感じ、背負っていたことであろう。古今東西、人々から声望の高い英雄像はその華々しい活躍や軌跡の反面、どこか皆孤独である。近隣勢力との流動的な関わりを持ち、時にそれらの脅威の中で、自分たちの強みを存分に発揮し、生き残る術を模索しながら独自の存在感を放ち駆け抜けた村上水軍。時代の孤高な存在の一つとして彼らは、その自由な生き様を通し現代に生きる私たち一人ひとりに向かって、本来の人間の生き方とは何か、人間像とは何か、という問いを投げかけてくるように感じる。
この作品に触れた方々がこの音楽-人間の生み出す生のドラマ-を通して人間の本来持つ力強さ、ひいては人間の可能性や明日への希望を再認識する一つのキッカケとなるのであれば、作曲者として幸いである。
◆創作にあたって
これまでにも様々な小~中編成作品を創作する機会がありましたが、本作では委嘱に際し「小編成作品の可能性の追求」というコンセプトをご提案頂きました。各パートに求められる技術的な難易度が比較的高めとなっておりますが、それ故に、各楽器の特性を存分に活かしきることのできる作品となっていると感じています。
曲の世界観や音楽表現、響きの拡がりとしても壮大なスケールを想定しているため、最小編成はもちろんのこと、30人を超える中編成や50人程度の大編成で演奏して頂くのも効果的だと思います。
(田村修平)