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楽曲詳細情報
- 作曲
- 三澤 慶(Kei Misawa)
- 演奏時間
- 9:20
- グレード
- 5
- 主なソロパート
- Ob. (S.Sax.) / E.H. (A.Sax./Hrn.)
- Trp.最高音
- 1st:High C♯(High C) / 2nd:A (G) / 3rd:F♯(E)
- 演奏最少人数
- 36~
- 編成
- 吹奏楽(大編成)
楽器編成
- Piccolo (doub. Flute)
- 1st Flute
- 2nd Flute
- 1st Oboe
- 2nd Oboe (doub. English Horn) (option)
- 1st Bassoon
- 2nd Bassoon (option)
- Clarinet in E♭
- 1st Clarinet in B♭(div.)
- 2nd Clarinet in B♭(div.)
- 3rd Clarinet in B♭(div.)
- Alto Clarinet in E♭
- Bass Clarinet in B♭
- Contrabass Clarinet in B♭(option)
- Soprano Saxophone in B♭
- 1st Alto Saxophone in E♭
- 2nd Alto Saxophone in E♭
- Tenor Saxophone in B♭
- Baritone Saxophone in E♭
- 1st Trumpet in B♭(doub. Flugel Horn)
- 2nd Trumpet in B♭(doub. Flugel Horn)
- 3rd Trumpet in B♭(doub. Flugel Horn)
- 1st & 2nd Horns in F
- 3rd & 4th Horns in F
- 1st Trombone
- 2nd Trombone
- 3rd Trombone
- 1st & 2nd Euphoniums
- Tuba
- String Bass
- Harp (option)
- Piano (option)
- Timpani
- Snare Drum
- Wind Chime
- Castanet
- Triangle
- Crash Cymbals
- Bass Drum
- Tambourine
- Suspended Cymbal
- Finger Cymbal
- Tam-tam
- Ratchet
- Claves
- Glockenspiel
- 4 Toms
- Floor Tom
- Vibraphone
- Xylophone
- Chimes
楽曲解説
東京隆生吹奏楽団2024年度委嘱作品。
私の初めての吹奏楽作品である2006年度全日本吹奏楽コンクール課題曲(IV)、「海へ…吹奏楽の為に」では当時の感覚でさまざまな海の表情のスケッチを試みた。白波を立てて激しく岩を打ちつける波濤や、美しく砂浜に寄せては返すさざ波を、突発的な強いリズムやフレーズ、テンポの揺らぎの濃淡で表現した。作品の発表に先立つ2004年12月、作曲作業と前後してインドネシア・スマトラ沖を震源とする大きな地震が起った。またそれに伴って発生した巨大な津波が人々の命や暮らし、歴史や文化を瞬時に呑み込み破壊する様を我々はテレビのニュース映像等を通して目の当たりにした。穏やかなリゾート地の美しい海が突如として恐ろしい表情に豹変し、人々に襲いかかったのである。(そして、約6年後、その恐ろしい津波は我々の日本に牙をむくことになろうとは想像すらしなかったことであった…)
しかし、それでもなお私の中に憧れとしてある美しい海の情景をもう一度音楽でスケッチしてみたいと思い作曲したのが本作である。波は寄せる前には必ず引く。そしてその「引き方」(つまり、時間的なものであったり、量的なものであったり…)によって、我々は次に寄せる波の大きさを想像し、気持ちの準備を整え、その時を待つ。やがて押し寄せた波はまるで一つのフレーズの頂点を形成するように張り詰めた空気を解放させ、時を置かず次の波の準備に取りかかる…このような波の風景を均一ではない速度の揺らぎと、それに併せた音符の密度や音量の濃淡の連動を加えることで表現している。
また、大海原を進む船が突如として嵐の中に迷い込む風景や、午後の凪の海に偶然に巡り逢った渡り鳥たちとの戯れ、そして水平線に沈みゆく雄大な夕日の情景などをスケッチしている。また、その中で交響詩「海」などで知られる偉大なクロード・ドビュッシーの作品の中に散見される全音音階や、それに伴って発生する増三和音の特徴的な響きを使用したこともあり、東京隆生吹奏楽団・音楽監督、畠田貴生先生からのアイディアもいただきながら本作のタイトルを決定した。
そして、奇しくも本作を作曲中の2024年1月1日、海は再び我々に恐ろしい牙を剥いた。我々の記憶に新しい「能登半島地震」とそれに伴い発生した津波である。この災害により亡くなられた方々に心からご冥福をお祈りすると同時に、被害に遭われた方々にお見舞いを申し上げたい。
現在、全世界に共通する環境問題。とりわけ地球温暖化の問題では、海面上昇や気候変動による異常気象など様々な問題が年を追うごとに顕在化してきている。将来、またいつか私が「海」にまつわる作品を書く日がまで「海」が依然として人々にとっての憧れである、美しい存在であり続けてほしい、と願う。 最後に、素晴らしい演奏で本作の初演飾ってくださった、東京隆生吹奏楽団の皆様、作品に深い愛情と理解、音楽的なアイディアを示してくださった音楽監督の畠田貴生先生にこの場をお借りして感謝を申し上げます。
(三澤 慶)