宅配スコア閲覧
演奏指示が細かく書いてあるため、取り組みやすさ◎!
非常に密度が濃く音楽的な内容も充実した作品です。打楽器とピアノがとても重要な役割を担っています。特にピアノは随所で効果的な使われ方をしています。またスコアやパート譜の・・・
♪詳細情報♪
演奏時間:10分30秒(約)※7分以内にカット可能
グレード:4.5
主なソロパート: Ob. / *Cl. / *A.Sax./ T.Sax. / Trp. / *Trb. / Euph. / Tuba / Timp. (*=カットする場合はソロ無し)
Trp.最高音:1st: A / 2nd: G
演奏最少人数:17名
編成:吹奏楽(小編成)
▼楽器編成▼
2nd Flute (unis. Piccolo)
(Optional)
Oboe (or Soprano Sax, Clarinet in Bb)
1st Clarinet in B♭
(Optional unis. Soprano Sax.)
└doub. Shaker (Optional)
2nd Clarinet in B♭
Alto Saxophone in E♭
└doub. Finger Cymbal, Shaker (Optional)
Tenor Saxophone in B♭
└doub. Dinner Bell (or 風鈴)
Bass Wood Winds (Flex)
*いずれか最少1名で演奏可能
┌ Bassoon
│ Bass Clarinet in B♭
└ Baritone Saxophone in E♭
2nd Trumpet in B♭
1st Horn in F
└doub.Finger Cymbal
2nd Horn in F (Optional)
1st Trombone
└doub. Dinner Bell
2nd Trombone
Bass Trombone (Optional)
Euphonium
Tuba
Contrabass (Optional)
Piano (Optional)
*出来るだけ演奏することが望ましい
Tam-Tam/Kick Bass Drum
Hi-Hat/Snare Drum
Whistle/Finger Cymbal(B♭)
Tam-Tam/Bamboo Chimes
Glockenspiel/Xylophone
Whistle/Vibraphone/Anvil
Chaina Gong
Finger Cymbal (D♭)
Suspeded Cymbal
Wind Chimes
Tam-Tam/Bongos/Cowbell
2Woodblocks/Triangle
Finger Cymbal(C)/Whistle
Xylophone/Finger Cymbal(E♭)
♪A.Sax. / Shaker, Finger Cymbal
♪T.Sax. / Dinner Bell or 風鈴
♪Hrn.1 / Finger Cumbal
♪Trb.1 / Dinner Bell
◆編成について
・2nd Fl.パートで"with Piccolo”と記載されている場合は、Piccoloに持ち替え演奏すること。(解除は"Without Piccolo")。Piccoloが用意できない場合はそのままFluteで演奏してよい。なお、多人数による演奏の場合はFluteとPiccoloが混在したまま演奏できる。
・1st Clarinetは必要に応じてSoprano Saxophoneを重ねることができる。これはClarinetが音量バランス上不足している場合にのみ用いること。
・PianoはOptionalであるが出来るだけ演奏することが望ましい。ベースラインを担当する箇所が多いため、会場の制約がない場合、上手側に配置したほうがアンサンブルしやすく良好である。また、蓋は最大に開くことが推奨される。なお、glissandoはハンドタオル等を使用すると指への損傷を防ぐことができる。
・2nd Percussionと3rd Percussionは、それぞれ1人で演奏する場合、( )つきの音符は割愛してよい(ただし可能なら演奏すること)。各パート2人で演奏する場合はAパートBパートをそれぞれ担当し、( )つきの音符も含めて演奏する。
・Tom-TomやBass Drumは任意に中国や日本、その他民族的な太鼓に置き換えることが可能であり、持ち合わせがある場合は部分的にも試す価値がある。更に、[12][34][35]部分は2台を同時に叩く、複数人で叩く、装飾音を追加する等のアレンジが許容される。
・Percussionの楽器が揃わない場合、別の楽器で代用すること。ただし、Finger CymbalをGlockenspielで代用することは推奨されない。
・必須楽器が揃わない場合、欠落した音は同じ音高をもつ別の楽器によって補うこと。また、技術的な問題や音量バランスの問題を解決するために同じ措置を取ることも許容される。
♪楽曲解説♪
本作は複数団体による共同委嘱によって2019年初頭に制作された楽曲である。
曹操(そうそう、ツァオツァオ、 字(あざな)は孟徳)という中国の歴史上の人物は日本でも有名で、ご存知の方も多いと思う。優れた詩人でもあった曹操は、日本で言う織田信長タイプの英雄であり、後漢末から三国時代(A.D.155~220)にかけて活躍した。衰退した後漢の皇帝を擁立し、帝国内に自らの国である「魏」を建てたが、本人自身は王(皇帝の下位)にとどまり帝位にはつかなかった。彼はときに残忍だった。徐州では父の弔い合戦を名目に大虐殺をおこない、後漢皇帝を傀儡化もした。歴史をもとにしたフィクションである『三国志演義』では主人公劉備のカタキ役として描かれ、悪人として多く認識されている。
しかし反面、彼は理想に燃え、市民のために戦い、政治をおこなった人物でもあった。題名の由来にもなっている「對酒歌太平時」からはじまる曹操の詩は、彼の理想を表す一つの証拠でもある。この漢詩は、誠実で優れた治世によって、官吏が民を苦しめることはなく、戦争もなく、田畑が大いに潤い人々から草木、昆虫まで幸せに暮らす世界が描かれている。
本作はこの漢詩と曹操の生きざまにインスピレーションを受け作曲されたものである。全体は大きく4つの部分に分かれる。
冒頭第1部は、暗い楽想によって「大地のテーマ」が提示され、飢餓と戦乱による国土の荒廃を表現している。やがてそれは太平を希求する人々の悲痛な祈りとなる。それを断ち切るように、戦乱の炎が木管のうごめきによって表現される。そののちの金管によるG音は戦場から曹操を呼ぶ声である。
第2部は「戦争の12音列」がフガートで提示された後、ダイナミックな音塊を多用した激しい楽想によって闘争と混乱が表現されている。さまざまな楽想に変化したのち、再び曹操への戦場からの呼び声がより激しい形で再現される。
第3部は、曹操の宴の場面である。一部京劇の影響もあるスケルツォ的な音楽で、詩歌だけでなく音楽、舞踊、建築まで愛した曹操の芸術家としての一面を表現した。
第4部では、宴もたけなわな頃、曹操は一人自室にこもる。そこで曹操は太平の世を夢想する。全曲を通じて最も調性的な箇所。アルトサックスのソロはまるで平和な世界を散歩しながら鼻歌を歌うようである。これに呼応するかのように、高音木管によって「戦争の12音列」が美しい形になりオブリガードで奏される。やがてそれらは、幾千万の民と自然を養う力強い「大地のテーマ」となる。しかしそれは曹操の夢であり、戦乱の炎と名を呼ぶ声によって、彼は再び戦場へと引き戻される。
『對酒』は曹操の死の7年ほど前に発表されたと言われている。彼の死後1800年、果たして彼の理想は世にあらわれただろうか?
(鹿野草平)