宅配スコア閲覧
吹奏楽完全版の登場です!
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楽曲詳細情報
- 作曲
- ベラ・バルトーク(Bela Bartok)
- 編曲
- 森田一浩(Kazuhiro Morita)
- 演奏時間
- 19分00秒(約)
- グレード
- 5
- 調性
- 原調
- 主なソロパート
- Ob. / Bsn. / B♭Cl. / Bass Cl. / Tuba
- Trp.最高音
- 1st:high H / 2nd:high H / 3rd:A
- 編成
- 吹奏楽
- Piccolo (doub. 3rd Flute)
- 1st & 2nd Flutes
- 1st Oboe
- 2nd Oboe
- (doub. English Horn in F)
- 1st Bassoon
- 2nd Bassoon
- (doub. Contrabassoon)
- Clarinet in E♭
- 1st Clarinet in B♭ (div. a3)
- 2nd Clarinet in B♭ (div.)
- 3rd Clarinet in B♭ (div.)
- Alto Clarinet in E♭
- Bass Clarinet in B♭
- Contrabass Clarinet in B♭
- Soprano Saxophone in B♭
- 1st Alto Saxophone in E♭
- 2nd Alto Saxophone in E♭
- Tenor Saxophone in B♭
- Baritone Saxophone in E♭
- 1st Trumpet in B♭ (div.)
- 2nd Trumpet in B♭
- 3rd Trumpet in B♭
- 1st & 2nd Horns in F
- 3rd & 4th Horns in F
- 1st Trombone
- 2nd Trombone
- Bass Trombone
- Euphonium (div.)
- Tuba (div.)
- String Bass
- Celesta
- Piano
- Harp
- Timpani
- Percussion ※6 players~
- Snare Drum
- Tenor Drum
- Bass Drum
- Crash Cymbals
- Suspended Cymbal
- Tam-tam
- Triangle
- Glockenspiel
- Xylophone
- Vibraphone
- Marimba
楽器編成
楽曲解説
ハンガリーの劇作家レンジェル(1880-1974)の戯曲『中国の不思議な役人-グロテスクなパントマイム-』の付随音楽として1924年に作曲されたこの作品は、あまりに生々しい台本の影響もあって、ケルンでの初演とプラハ再演(いずれも上演予定期間を満たすことなく中止)ののち、永いあいだ原作どおりに上演されることがなかった。特に生地ブダペストでの舞台公演が実現しなかったことに憂慮したバルトークは、演奏会用版の制作を契約出版社に提案し、その結果生まれたのが「組曲版」である。組曲とはいっても、バレエ音楽などから独立曲を抜き出して編んだ慣例的な組曲とは異なり、全体の3分の2をそのまま演奏し(数カ所の短いカットあり)、新しいコーダを加えた「抜粋」のスタイルである。後半をそっくり割愛しているため、ストーリーの上では結末に達していないが、いろいろ物議をかもした台本から離れた聴きかたをあえて作曲者が望んだ、という解釈もできるのではないだろうか。
この吹奏楽編曲は初め、埼玉県立伊奈学園高等学校吹奏楽部のコンクール自由曲として1997年に着手した。当初は、吹奏楽でも効果が期待できる「導入部」「少女の踊り」「終結部」を抜き出して編曲した。そののち2007年に大阪市音楽団(現オオサカ・シオン・ウインド・オーケストラ)から残りの部分も編曲してみないか、という申し出を受け「第1~第3の誘惑」を書き足した。ほんとうは未編曲の“残り全部”を書くつもりだったのだが、編曲不可能と判断せざるを得ない部分に直面し、「少女の踊り」の半ば29小節間を割愛して編曲した。さらに10年が経過し、CD〈ニュー・アレンジ・コレクション〉第14集に収録する案が浮上したのを機に、欠けていた29小節を埋め、既存部分にもかなり細かい補筆訂正をほどこし、組曲版の全曲編曲を完了した。
永いあいだ編曲楽譜を手許から放さなかったのは、ゆくゆくはバルトーク自身が構成した完全なサイズで世に出したいと考えていたことが最も大きい理由である。加えて原曲の存在感があまりに大きく、編曲済みの部分を眺めるたびに、こんな書きかたが果たして適切なのだろうかと自問をくり返したことも筆を遅らせる要因となった。バルトークはピアノの名手でもあったため、この楽曲におけるピアノは大変に重要な役目を持ち、“オケ中ピアノ”としては破格の技術が要求されている。一時期、こうした特殊な作品の吹奏楽編曲にどれほどの意義があるのかということまで考えたが、全曲をとおしての演奏を聴き、斬新で刺激的な音楽が滞りなく再現されていることを確かめたところで、ようやく気持に区切りをつけることができた。
なお、編曲に着手した当初はユニヴァーサル出版社刊の1955年版スタディスコアを原譜として使用していたが、のちに作曲者の次男ペーテル(1924-)が監修した改訂版スコアが2000年に出版された。さらに2010年には日本の研究者、村上泰裕氏がペーテルの協力を得て校訂した組曲版のスコアが全音楽譜出版社から上梓された。一番新しいこの楽譜は、自筆譜なども精査したうえで考えられる限りのプリントミス等を正した、世界で最も信頼性の高いスタディスコアであろうと考える。編曲を書き足すごとに原譜の改訂箇所は反映させてきたが、最終稿としてはこの全音版にすべてを委ね、表記なども追従したことをつけ加えておきたい。
20年前の初稿時から「いつまでも待つから、完成したら出版しましょう」と脱稿を気長に待ち続け、最後に背中を押してくださったブレーン株式会社の荒野聡氏には感謝の言葉もない。この場を借りて心よりお礼申しあげる。
(森田一浩)