須磨学園高等学校・中学校
広島ウインドオーケストラ
♪詳細情報♪
Clarinet in Bb
Alto Saxophone in Eb
♪楽曲解説♪
2017年、秋田市立城東中学校吹奏楽部(顧問:飯嶋宏紀先生)より委嘱を受けて書き下ろし、同校の3名(Fl.鈴木美咲、Cl.渡部里桜、A.sax.八矢日向子)によって初演され、全日本アンサンブルコンテスト第40回秋田県大会にて金賞を受賞した。
現代に生きている私達は五感(視覚、触覚、聴覚、味覚、嗅覚)の中でも最も視覚を多用しているのではないだろうか。それは信号機の色、インターネットの写真や記事、風景や人の表情…。
しかし、もし一日中海辺の砂浜で目を瞑って過ごしてみると、どうだろう。
普段ならまずスマホのカメラで撮影してSNSにアップするのかもしれないが、その日は何もせず、ただじっと目を瞑って全身で感じるとしてみよう。きっとそこで感じるのは、波の音や風の匂い、潮風の味、砂のザラザラとした触感、海鳥の声。もしかすると日常では視覚に頼るあまり、感じていないことも生活の中に多々あるのではないだろうか。
この曲は「見えない鳥たち」という表題だが、鳥というものは"普段は"見える存在である。しかし、その鳥に"見えない"と前置きがついているということは、きっとその鳥は聴き手や演奏者の感覚の中に、あるいは想像や記憶の中に存在しているということなのだろう。
昨今では多くのものが可視化(=見ることができる状態)される傾向にある。機械と人間の対話、いわゆるAI技術というものが話題になっているように、人間の感情や意思すらも機械によって可視化、データ化され、それに応じてくれる。技術が進歩すれば、機械自体が各々の感情を持つ日もそう遠くはないかもしれない。
しかし、僕は"見えない"からこそ、この作品に接する一人ひとりの感性の奥深くへ向かって、問いを投げかけているような気もするし、そこに人間ならではのアナログさ、温かみや不完全さを知ることができるので、人間ってなんだか面白いなあ、と感じるのだ。
それぞれの心の中に生きる鳥を、あるいは僕自身がそれを表現しようとした音や楽譜そのものを素直に感性で受けとめ、想い想いに表現して頂けるのであれば、作曲者として幸いである。
田村修平