編曲:黒川圭一(Keiichi Kurokawa)
演奏時間:4:20(約)
グレード:2.5
主なソロパート:--
Trp.最高音:Aパート:Es Bパート:B♭
編成:吹奏楽
(A)…Gr.2.5 (B)…Gr.1 シングルパート…Gr.1.5
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練習用音源
Flute (B)
練習用音源
Oboe (opt.)
練習用音源
Bassoon (opt.)
練習用音源
Clarinet in B♭ (A)
練習用音源
Clarinet in B♭ (B)
練習用音源
Bass Clarinet
練習用音源
Alto Saxophone in E♭ (A)
練習用音源
Alto Saxophone in E♭ (B)
練習用音源
Tenor Saxophone in B♭
練習用音源
Baritone Saxophone in E♭
練習用音源
イギリス音楽史を代表する作曲家、グスターヴ・ホルスト(Gustav Holst/1874~1934)は、近代吹奏楽史において最も重要な作曲家のひとりであることに疑問の余地はないでしょう。1909年に作曲されたとされる「吹奏楽のための第1組曲」、1911年に着手された「吹奏楽のための第2組曲」とは、現在に連なる吹奏楽オリジナル作品の嚆矢として今なお広く演奏され続けています。
一方で、広く世間に目を向けたときに、最も親しまれているホルストの旋律といえば、組曲《惑星》の第4曲「木星」の中間部分でしょう。管弦楽曲の人気曲として組曲全体、あるいは「木星」単独で採りあげられ広く演奏されているほか、ポピュラー音楽のシーンでも、平原綾香さんや本田美奈子さんなどの歌唱によって親しまれています。
人口に膾炙したこの名旋律を、演奏グレードにも配慮した形で、より多くのバンドに、そして音楽的にも色彩豊かに演奏してもらえることを企図して書いたのがこの編曲です。
モチーフの一部を用いて静かに始まる冒頭は、宇宙的な映像の先にほのかに見える木星…というようなイメージをしてもよいかもしれません。美しく安定した弱奏のコントロールが必要であるとともに、鍵盤楽器を含めた打楽器群もバランスには十分な配慮が求められます。「stagger breathing」はいわゆるカンニング・ブレスです。特にパートを1名で演奏している場合には、他パートともしっかりとコミュニケーションを取りながら、自然な響きを保てるよう工夫してください。
[B]から[E]の手前までは、原曲のトランスクリプションに近い形で書かれています。旋律のフレージング、伴奏の音価や音の処理など、原曲も聴きながら、演奏者の児童・生徒たちといっしょに考えてみてください(数々の名盤が容易に入手できることも、クラシックの編曲作品を採りあげる学習上の大きなメリットです)。
[E]以降は、少しずつオーケストレーションの形を変えていきます。[E]の部分は、オプションの下のオクターブを加える場合でも響きがあまりに重々しくなりすぎないほうが良いでしょう。[G]の「Poco piu mosso」は、テンポが僅かに前向きになる程度で、決して早すぎないように。特に、高音木管群の装飾句は走りやすい音形なので注意が必要です。[H]からは、ボレロ風のリズムが聴かれます。ここの「Maestoso」は表現上の指示であり、テンポは変化しません。[I]直前の「sosten.」は、アラルガンド的な処理を試みても良いでしょう。[I]からの「Ancora poco piu mosso」も慌ただしいテンポは好ましくありません。太陽系最大の惑星である木星の、堂々たる姿を表出してみてください。主旋律、高音の装飾句、伴奏のバランスも適切に処理することが求められます。最後は、原曲の終結部を模した響き(これも演奏者と一緒に確認してみてください)で華々しくエンディングを迎えます。
A(上級生)パートはグレード2.5程度、Bパート(下級生)は1.5程度で書かれています。下級生パートは、日本の小学生や中学から楽器を始めた1年生でも無理なく演奏できる難易度です。この編曲では、演奏上の負担を減らしながらも、より大きな演奏効果を得られるよう、繰り返しの要素が多く用いられています。日々の基礎練習でも取り組んでいるような、シンプルな音形でも安定した響きを保つことの重要性を、楽器を手にして日の浅い演奏者たちにも実践的に感じてもらえれば、そして、この曲を通じての学びが、その先の活動へとさらに繋がっていけば幸いです。
(黒川圭一)