作曲:森山至貴
演奏時間:鳥をつくる 5分30秒(約)
花 2分40秒(約)
くだものを煮る 3分50秒(約)
未来 4分50秒(約)
編成:混声四部合唱(Soprano / Alto / Tenor / Bass)
言語:日本語
伴奏:ピアノ
『鳥をつくる』はEnsemble Polanoの委嘱により2021年に初演された、混声合唱とピアノのための組曲です。作曲から初演にかけての時期は、COVID-19の流行によりさまざまな合唱団が活動の維持に苦しんでいた頃で、ご多分に漏れずこの作品の初演も一度は延期になりました。さまざまな方々のご尽力により最終的には無事初演され、深く安堵したことを覚えています。関係各位にあらためて感謝いたします。 魚本藤子さんの詩の鮮やかな具象性は、読者の想像力を信頼しているという一点において、とかく愛や希望をむき出しのまま歌ってしまう合唱の図々しさと対極にあるものです。作曲にあたっては、それらの言葉の豊かなイメージの輪郭を丁寧に音に写し取ることを目指しました。その結果として、歌い上げるというよりは語りかけるような歌い口の箇所が多くなりましたので、言葉を明瞭に聞かせることが全曲を通しての演奏のポイントとなると思います(そのために所定のテンポより遅く演奏することなども可能だと思います)。以下、各曲の簡単な解説です。
1.鳥をつくる
ユニゾンによる導入のあと、流れるようなアルペジオの伴奏に乗って一羽の鶴が作られる過程が描かれます。魚本さんが一連の動作の描写に織り込んだ美しいメタファーの数々をぜひ味わってください。
2.花
「花」というたったひとつの文字が喚起する、喜びに満ちたイメージの数々を、9/8拍子の弾むリズムで軽やかに表現しました。
3.くだものを煮る
ただ無心に何かをおこなう、そんな時間の尊さが、まさに煮詰められた果物のように甘い輝きを放つ言葉に凝縮されています。やや暗い曲調から明るい曲調へと転調を通じて移り変わっていくさまをどうぞ堪能してください。
4.未来
書き順にしたがって漢字を書くさまがこれほど豊かなイメージを連れてくる、というあたたかな驚きに存分に身を任せてください。最後まで歌って、聞いていただければ、この詩が「未来」と題されていることにきっと納得してもらえると思います。
(森山至貴)
鳥をつくる
未来
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