スペイン狂詩曲 -スペインのフォリアとホタ・アラゴネーサ/F.リスト(森田一浩)【吹奏楽ライセンス楽譜】
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- YDAL-B07
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- ブレーンミュージック / Brain Music
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宅配スコア閲覧:スペイン狂詩曲 -スペインのフォリアとホタ・アラゴネーサ
♪詳細情報♪
編曲:森田一浩(Kazuhiro Morita)
演奏時間:10分00秒 (約)
グレード:5
調性:原調 (d:-D:)/アレンジ (Cis:-Es:)
楽曲構成:
Ⅰ. スペインのフォリア Folies d'Espague
Ⅱ.ホタ・アラゴネーサ Jata aragonesa
主なソロパート:特になし
Trp.最高音:1st:As / 2nd:G / 3rd:Ces
編成:吹奏楽
▼楽器編成▼
1st & 2nd Flutes
1st Oboe
2nd Oboe
(doub. English Horn in F)
1st Bassoon
2nd Bassoon
(doub. Contrabassoon)
Clarinet in E♭
1st Clarinet in B♭ (div.)
2nd Clarinet in B♭ (div.)
Alto Clarinet in E♭
Bass Clarinet in B♭
Contrabass Clarinet in B♭
Soprano Saxophone in B♭
1st Alto Saxophone in E♭
2nd Alto Saxophone in E♭
Tenor Saxophone in B♭
Baritone Saxophone in E♭
2nd Trumpet in B♭
3rd Trumpet in B♭
1st & 2nd Horns in F
3rd & 4th Horns in F
1st Trombone
2nd Trombone
Bass Trombone
Euphonium (div.)
Tuba (div.)
String Bass
Celesta
Harp
Persussion ※6 players~
Bass Drum
Crash Cymbals
Suspended Cymbal
Gong
Triangle
Tambourine
Castanets
Glockenspiel
Vibraphone
Xylphone
♪楽曲解説♪
原曲は、ハンガリー生まれの作曲家、リスト(1811~86)が1858年に作曲したピアノ独奏曲である。リストは「ピアノの魔術師」と評されたほどの優れたピアノ奏者でもあり、主に自らの演奏会で発表するために、数多くのピアノ作品を作曲した。「スペインのフォリアとホタ・アラゴネーサ」とのサブ・タイトルを持つこの作品も、演奏旅行の際に触れたイベリア半島の民族音楽を題材に、超絶的なピアノ・テクニックを最大限に活かしたスタイルで書かれていて、現代においてもリスト作品を好むピアニストには重要なレパートリーとなっている。
大きな3つの部分からなるこの作品を聴いて、まずはいくつかの聞き覚えがあるメロディに気づく。壮大な序奏のあと、低音に現れる重々しいテーマ(練習番号A)は、アルカンジェロ・コレッリ(1653~1713)の《ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ》作品5(全12曲)の最終曲に使われた「ラ・フォリア」と同じメロディである。「フォリア」はイベリア半島起源の舞曲で、元来は騒がしい踊りのための音楽であったとされるが、時代を経てゆるやかな曲調に変化し、低音部の進行が定型化された変奏曲のスタイルで演奏されるようになった。特徴的な進化を遂げたフォリアは多くの作曲家によって作品にとり入れられ、その内でもっとも知名度の高い作品がコレッリの「ラ・フォリア」なのだ。リストの引用も、これにならったものと考えられる。
重厚な第1部に続き、第2部(練習番号F)は対照的な軽快さを持っている。ここでもリストはスペインの代表的な舞曲である「ホタ」(“ホタ・アラゴネーサ”は、アラゴン地方のホタの意)を引用しているが、このメロディもまた多くの作曲家によって使われてきた。吹奏楽編曲でもしばしば演奏されるヘロニモ・ヒメネス(1854~1923)のサルスエラ《ルイス・アロンソの結婚》間奏曲に登場する、おなじみのメロディである(練習番号H)。リストはこのメロディを構成の中心的な存在としては扱わず、エピソードのひとつ程度にとどめているが、それでも聞き覚えのあるメロディが現れると、驚きと嬉しさがまじった気持がわき起こってくる。
そして第3の部分(練習番号O)は、いくつかの新しい楽想が加わってはいるが、基本的には「ホタ・アラゴネーサ」の雰囲気を発展し、最後にもう一度「フォリア」を再現(練習番号W)させた大きな終結部ととらえていいだろう。原曲は、以上のような構成のあちこちに、華麗なピアノ独奏曲を演出するためのテクニカルなカデンツァが挿入されている。吹奏楽編曲にあたっては、割愛せざるを得ないピアニスティックなカデンツァが失われても音楽の流れが成立するかどうか、という問題を最初に検証しなければならなかった。ヴィルトゥオーソ的な演奏で表現される音楽を編曲する場合に、避けて通ることのできない課題でもある。その過程で大きなヒントを与えてくれたのは、この「スペイン狂詩曲」をオーケストラと独奏ピアノのための協奏曲に編曲したフェルッチョ・ブゾーニ(1866~1924)の楽譜であった。ブゾーニの編曲の存在を知った当初は、リストの書いたピアノ譜にオーケストラ伴奏を施した程度のものと想像したが、スコアを手に入れてみると、そんな単純な編曲ではないことがわかって驚愕した。原曲のカデンツァ部分は、リストのこの種の作品にありがちな即興性に満ちているが、オーケストラという合奏体と競演する際にはどうしても不自然な“字余り”あるいは“言葉足らず”が生じる。こうした、音楽の流れに整合しない部分が細かく修正され、もともと協奏曲としてつくられたかのような、疑問のないかたちにまとめられていたのである。吹奏楽の編曲では、カデンツァ部分を含めて全体の25~30%程度をカットしているが、たんなる短縮版ではなく、納得感を伴う再構成版とすることを心がけた。その指針は、ブゾーニの編曲が示唆してくれたものだと思っている。
埼玉県立伊奈学園総合高等学校吹奏楽部の指導者、宇畑知樹先生の提案で、同部の2015年度吹奏楽コンクール自由曲として編曲した。ピアノ曲を基にした編曲は、オーケストレーションの選択肢が多く、書いている本人も最終形がなかなか見えてこないものだ。そんな編曲の進行を、多分は大きな不安を感じながらも辛抱強く見守ってくださった宇畑先生に、この場を借りて感謝の意を表したい。(森田一浩)