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楽曲詳細情報
- 作曲
- ベラ・バルトーク(Bela Bartok)
- 編曲
- 黒川圭一(Keiichi Kurokawa)
- 演奏時間
- 12分00秒 (約)
Ⅰ.トランシルヴァニアの夕べ (セーケイ人たちの夕べ) Evening in Transyvania [3:22]
Ⅱ.熊踊り Bear Dance [1:40]< br>Ⅲ.メロディ Melody [2:31]
Ⅳ.ほろ酔い加減 Slightly Tipsy [2:18]
Ⅴ.豚飼いの踊り Swineherd's Dance [2:10] - 調性
- I.原調 II.原調(Des:)/アレンジ(D:) III.原調(H:)/アレンジ(B:)
IV.原調(As:)/アレンジ(G:) III.原調(A:)/アレンジ(As:) - グレード
- 3.5
- 主なソロパート
- Picc./ Fl./ Ob.(or Fl. A.Sax. Trp.) / Bsn.(or B♭Cl.,B.Cl.&Tuba, T.Sax.) /B♭Cl.
- Trp最高音
- 1st / A 2nd / Es
- 最少演奏人数
- 23名
- 編成
- 吹奏楽(小編成)
- Flute 1 (doub. Piccolo)
- Flute 2
- Oboe (opt.)
- Bassoon (opt.)
- E♭Clarinet (opt.)
- B♭Clarinet 1 & 2 (all div.)
- Bass Clarinet
- Alto Saxophone 1 (div. opt.)
- Alto Saxophone 2
- Tenor Saxophone
- Baritone Saxophone
- Trumpet 1 & 2
- Horn 1 & 2
- Trombone 1 & 2
- Euphonium
- Tuba (div.)
- String Bass (opt.)
- Harp (opt.)
- Percussion ※3 players~
- Timpani
- 2 Snare Drum (High & Low)
- Bass Drum
- Tenor Drum
- Crash Cymbals
- Suspende Cymbal
- Triangle
- Glockenspiel
- Xylophone
- Vibraphone
- Marimba (opt.)
楽器編成
楽曲解説
バルトーク・ベーラ・ヴィクトル・ヤーノシュは、作曲家、ピアニストとしての活動のほか、東欧圏の民謡を採集・分析にも大きな成果を残し、民俗音楽研究の礎を切り開いたことでも知られている。
1904年に現在のスロヴァキア領出身の娘が口ずさんでいた民謡に触れたことをきっかけに興味を抱き、翌1905年から第一次世界大戦終結までゾルタン・コダーイとともに毎年民謡の採集旅行を行った。その範囲は、ハンガリーやルーマニアを中心にブルガリアやセルビア、さらには北アフリカのアルジェリアにまで及び、採集した旋律の総計は10,000を超える。
これらの農民音楽の分析のなかで、バルトークは長・短調の機能を持たない5音音階や古い教会旋法、変化に富む自由な拍子やリズムなどを発見した。西欧を中心とした芸術音楽にはなかった音楽要素は、ロマン派音楽からの脱却を模索していたバルトークを強く方向付けることとなった。
バルトークは、民俗音楽採集旅行と並行して「10のやさしい小品」(BB51)「子どものために」(BB53)「ルーマニア民族舞曲」(BB68)「ソナチネ」(BB69)などのピアノ作品を作曲し、民俗音楽の音楽要素を自身の音楽語法のなかに取り込んでいった。
1931年、バルトークは「ソナチネ」を「トランシルヴァニア舞曲」(BB102B)に、また「15のハンガリー農民歌」(BB79)を抜粋して「ハンガリー農民の歌」(BB107)とするなど、初期の民謡素材によるピアノ作品を管弦楽に編曲する作業を行ったが、この「ハンガリーの風景」も同じようして編曲された作品である。
「ハンガリーの風景」は、バルトークがピアニストとしてしばしば演奏会で演奏し、人気のあった以下の5曲から構成されている。編曲の作業は、バルトークが夏期音楽講座の講師として招かれていたモントゼーの地でなされ、初演は1934年11月26日にハインリッヒ・ラバー指揮、ブダペスト・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で行われた。
第1楽章 トランシルヴァニアの夕べ(セーケイ人との夕べ)
「10のやさしいピアノ小品」(BB51)の第5曲からの編曲である。この曲の旋律は民謡の引用ではないバルトークのオリジナルのもので、いずれもハンガリー5音音階によっている。ゆったりとしたルバートの主題(A)と舞曲風の主題(B)とがABABAの形で交互に現れる。旋律は木管楽器が奏し、それ以外の楽器(管弦楽では弦楽器)が伴奏を演奏するという構造になっている。ソロも多いので旋律と伴奏とのバランスに注意したい。特にミュートを付けた金管楽器群は、柔らかい弦楽器的な音色を意識して欲しい。
第2楽章 熊踊り
「10のやさしいピアノ小品」の第10曲からの編曲である。この旋律もバルトークのオリジナルであるが、ハンガリーの民俗舞踏「豚飼いの踊り」のリズムが用いられている。「熊踊り」という、熊を2本足で踊らせて見世物にする風習は20世紀初頭までハンガリーで行われていた。太鼓の伴奏に乗せて、ヴァイオリンを演奏しながら歌って熊を踊らせたのだが、この曲でも小太鼓による8分音符のオスティナートがその様子を描写している。管弦楽では弦楽器が同音連打を奏しているが、管楽器では演奏が困難なので2度音程の反復に書き換えてある。1音1音をはっきりと、かつ運指やタンギングも正確に演奏して、力強い雰囲気を表出して欲しい。
第3楽章 メロディ
「4つの挽歌」(BB58)の第2曲アンダンテの編曲である。「メロディ」という標題は管弦楽編曲の際に付けられた。伴奏のハーモニーの響きにはバルトークも影響を受けたとされるドビュッシー的な響きが感じられる。管弦楽では弦楽器のトレモロによって奏される伴奏の和音は、ややくすんだ響きを狙った音色やサウンド作りをすると、より曲の雰囲気を醸し出せるであろう。一方、木管の7連符などは、はっきりと印象的に演奏して欲しい。この楽章のみハープ(この編曲ではオプション)が編成に含まれている。
第4楽章 ほろ酔い加減
「3つのブルレスク」(BB55)の第2曲の編曲。標題通り、ご機嫌に鼻歌交じりで千鳥足で歩く酔っぱらいの様子が描写されている。「ブルレスク」とは英語のバーレスク(burlesque)と同じ語源で、ユーモアと辛辣さを兼ね備えた、剽軽でおどけた性格の楽曲のことである。気まぐれなテンポの変化や、装飾音符によるリズムのズレ、しゃっくりのような突然の休止などを生き生きと表現して欲しい。
第5楽章 豚飼いの踊り
「子どものために」(BB53)の第1巻の終曲からの編曲。同曲の37番にも「豚飼いの踊り」という曲があるが(その曲にも前述の「豚飼いの踊り」のリズムが用いられている)、その旋律を笛吹きがこの形に変奏していたのをバルトークが採譜したという。右手に縦笛、左手にバグパイプを持って演奏したといい、この曲にもバグパイプ特有の5度の響きが用いられている。牧夫と何百頭もの家畜の群れが遠くから近づきまた遠ざかっていくという構成になっており、[E]からは家畜の群れがバタバタと通り過ぎていくような(16分音符が家畜の足音を描写している)賑やか雰囲気を表現したい。
この編曲は「小編成レパートリーコレクションVol.1」(BOCD-7185)のCD収録に際して書き下ろしたもので、2008年1月に行われた木村吉宏指揮/フィルハーモニック・ウィンズ大阪によるレコーディングが初演となった。