なにわオーケストラルウィンズ2008 (Live at The Symphony Hall & Tokyo Metropolitan Theatre, 2008)がデジタルリリース!
「夢のよう、なにわ」
キラキラとした音が舞台から溢れ出し、ホールいっぱいに広がってゆく。音楽を“聴く”というよりはむしろ“見る”といった感覚。音の振動を肌で感じることのできた不思議な瞬間、まるで夢のような新体感であった。
恥ずかしながら私は、なにわ《オーケストラル》ウィンズの演奏会に足を運んだのは今回が初めてであった。これまで何度もこのCDシリーズでは聴かせて頂いていたし、実際に聴きに行かれた方にもその素晴らしさを伺う機会も多かった。しかしながら“いつか聴きに行ってみたい”とは思いながらも、スケジュール調整が難しく、なかなか足を運ぶことができなかったのだ。
正直、今この原稿を書きながらも昨年まで聴きに行けなかったことが悔やまれてならない・・・。それほどの衝撃を受けた演奏会であった。国内プロフェッショナル・オーケストラ奏者たちによって結成される“なにわ”。技術が素晴らしい、音楽に感動がある、といったありふれた言葉だけで語るのはナンセンスであろう。ホール全体に響き渡る割れんばかりの聴衆の拍手と笑い。誰もが“初めて見る玩具を手にした子供心”を思い出したのではないか。次の演奏はどうなるのか!ワクワクした気持ちが終始続き時間を忘れるほどであった。丸谷明夫先生の楽しいお話、吹奏楽コンクール課題曲を使用した通常では実現不可能と思われる“なにわ”ならではの“実験”は吹奏楽関係者はもちろん、普段クラシカル音楽を聴かれない方々でも楽しむことができたはずだ。とにかく面白くて仕方がない。“なにわ”は耳もとで全ての楽器の音が聴こえる。まるで各々の楽器のすぐ近くで聴いているかのように発音、音色、呼吸が感じられるのだ。スコアを見ていないのに細かなアーティキュレーションやダイナミクスに至るまで譜面が見えてくるようであった。今まで知っている吹奏楽サウンドとは違う、言葉では語り得ない幻想的な世界であった。
“音楽は生が良い!"―よく聞く言葉だ。しかし、科学技術の発展した現代では音質・編集共に優れたCDが次々に発売されていくため、演奏会に直接足を運ばなくても音楽を楽しむことができてしまう。その便利さゆえに“生”を楽しむことを忘れてしまっていることもあるのではないだろうか。CDブックレットに書くにはやや矛盾しているかもしれないが“なにわ”は絶対に生で聴くべきだ。いや、感じるべきだ。
肌で味わわなくてはならない音楽が存在することを私は今回、再確認した。オーケストラの一流奏者たちが本気で吹奏楽をやっている。音もそうだが、その姿勢を直接目で見ることも大切なのではないか。そして、その残像をCDを通して想い返すことができたら最高ではないか。会場を訪れた多くの聴衆の笑顔が今でも忘れられない。 舞台と客席が一つになった奇跡的な空間─本当に「夢のような庭」であった。
八木澤教司 (作曲家)
デジタル配信曲
【演奏】なにわ《オーケストラル》ウィンズ【客演指揮】丸谷明夫/畠田貴生
- 夢のような庭
- 清水大輔
- トッカータ・マルツィアーレ
- ヴォーン・ウィリアムズ
- ロシア舞踏組曲
- キース・フラク
- I 序曲 Overture
II 哀しい舞曲 Elegiac Dance
III ペトルーシュカ Petrushka
IV トレバーク Trepak - エル・カミーノ・レアル
- アルフレッド・リード
- ファンファーレとアレグロ
- クリフトン・ウィリアムズ
- 吹奏楽のための民話
- ジム・アンディ・コーディル
- 岸辺のモリー
- パーシー・グレンジャー
- モンタニャールの詩
- ヤン・ヴァンデルロースト
- 行進曲 「スペアミント」
- V.チュリーヌ
- レイダーズ・マーチ
- ジョン・ウイリアムズ(編曲:小長谷宗一)