『女声合唱版初演プロジェクト・リレーコラム』第6回:特別対談 その②

女声合唱団ぱるらんどについて
石橋:特に母体はなくて、常に誰でもウェルカムです。なのでいろんな文化の人が集まっています。音を取るにしても、声の出し方にしても、さまざまな人がいて面白いです。団名は「言葉を喋るように」とか「ささやくように」みたいな意味の楽語です。響きも可愛いじゃないですか。ひらがなにすると字面もそうですし。言葉を大事にする女声合唱団。そういうポリシーにも合っているし、10分ぐらいで決まりました。
森山:でもみなさん楽語の意味を知っているから、こういう名前の合唱団で言葉が全然聞こえてこないってわけにいかないでしょうし、字面とは裏腹に気合いの入った合唱団名だなって思います。
石橋:それはそうですね(笑)。「音楽の言葉遣い」というのをよく言っているんです。僕たち日本語は綺麗に喋れますけど、音楽を介する時には気にすべき要素がたくさんあります。例えば大体の音楽って会話で喋るスピードより遅いので、ある音から次の音へ移るときの口の動き方をより細かく見なきゃいけなかったり、感情に合わせたスピード感で言葉を作る必要もあると思いますし。その辺には特にこだわっている合唱団です。
指揮者 石橋遼太郎さんについて
石橋:一応音楽家系ではあって、母は音楽大学のピアノ科出身です。その母方の祖父がギターのバンドマンという。ただ僕は、ピアノはちょこっとやっただけですぐ野球の方にいってしまって。歌は好きだったんですけど。
―高校では学生指揮者ですか?
石橋:いえ、違うんです。高校でも大学でもやってなくって。大学時代から一般合唱団で歌い始め、そこでまず声楽的なアプローチを学ばせていただきました。2017 年に社会人になり、2018 年頃にひょんなことから指揮をお願いされました。元々指揮者になろうと思っていたわけではなかったので「えぇ!?」とか言いつつ、思いがけず始めまして。結果はたまたま良かったんですが、これはちょっと面白いかもって。その後19 年あたりに「あい混」に入り、相澤直人さんと出会って自分の中で劇的な変化があり、本格的に始めました。
森山:東京国際に出演なさる22年まで4年前後ということですよね。それでこんなに振れちゃうんですね。同世代の指揮者の方からは、まあまあ石を投げられそうな…(笑)。
石橋:いえいえ、そんなことないです。でもそんな経緯なので、本当にちゃんと勉強しないといけないと思って。好きでやっていますけど、めちゃめちゃ時間を費やして勉強してきたつもりです。石を投げられたくないので言っておきます(笑)。

ピアニスト・岩本果子さんについて
石橋:僕は、初共演が23年のコンクールで。今はもうあらゆる合唱団でお願いしてます。素晴らしいところは色々あってキリがないんですけど、まず音が綺麗。技巧的に優れた方はたくさんいらっしゃるんですが、果子さんは、もちろんそういう技術もありつつ、倍音から響きから、どこか違うんですよね。ただポーンと弾いた一音だけで、ああ違うなという。あとはアンサンブル感ですね。ブレスが合う感覚です。ブレスが合っているから何をやっても合う。歌ってらっしゃるんですよね、ピアノで。歌のようなフレージングで、メロディーが立つという。
森山:そもそもご本人がとっても歌がお上手ですよね。私、歌も聴いたことありますけど素晴らしい歌い手で。 いつだったか、ビーブルのアヴェ・マリア。
石橋:あ、聴きました。僕も。
森山:この方は一体どうなっているんだろう…と思いながら聴かせていただきました。歌をわかってらっしゃって、もちろん譜面もものすごく上手に解釈なさる。大好きなピアニストさんです。
演奏会に向けて
石橋:鈴優会さんの素晴らしい初演があって、ですがそれを踏襲するだけの音楽にしようとは思ってなくって。楽器も人数も違いますし、テンポも変わってくると思いますし。自分たちなりにやってみて、みなさんが受け入れてくださるといいなと。
森山:書いたことにそれなりにこだわりはありましたが、初演から10年経ってあらゆる演奏を聴かせていただいているので。例えば、「ここのmolto rit.はこうだ!」みたいなのが最初はありましたけど、もう今は「molto rit.って書いてます」というだけです。あとは指揮者の方がどう解釈してくださるか、私は1人でニヤニヤしながら楽しめばいいという心境で、ただ気楽に、単純に楽しみにしています。
立会練習前に行われた今回の対談。
その後の練習では完成度を高めるため、多くの言葉が交わされました。
この女声版の響きは、ぜひ生で味わっていただきたい!4月19日は演奏会へ!!