ショプロン1989-国境を駆け抜けた自由の民-/鹿野草平【吹奏楽ライセンス楽譜】
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- YDOK-H06
- メーカー
- ブレーンミュージック / Brain Music
宅配スコア閲覧
宅配スコア閲覧:ショプロン1989-国境を駆け抜けた自由の民-
ダイナミックな演奏を生むことができる演奏効果の高い作品!
昔の自分なら「こんなカッコイイ曲は大編成のバンドしかできない」と思ったであろう作品が、小編成の世界でもどんどん登場する時代になったことを改めて実感しました。技術的にも配慮・・・
演奏時間:7:50(約)
グレード:4
主なソロパート:Ob.(or Fl.) / Trb.
Trp.最高音:1st:high C(or A) / 2nd:Ges / 3rd:Ges
演奏最少人数:24
編成:吹奏楽
1st Flute
2nd Flute (option)
Oboe
Bassoon (option)
Clarinet in E♭(option)
1st Clarinet in B♭
2nd Clarinet in B♭
3rd Clarinet in B♭(option)
Alto Clarinet in E♭(option)
Bass Clarinet in B♭
1st Alto Saxophone in E♭
2nd Alto Saxophone in E♭(option)
Tenor Saxophone in B♭
Baritone Saxophone in E♭
2nd Trumpet in B♭
3rd Trumpet in B♭(option)
1st & 3rd (option) Horns in F
2nd & 4th (option) Horns in F
1st Trombone
2nd Trombone
Bass Trombone (option)
Euphonium
Tuba
String Bass
Piano
1st Percussion
Drum Set
Snare Drum
2nd Percussion
Suspended Cymbal
2 Toms
Bongo
Crash Cymbals
3rd Percussion (option)
Tam-tam
2 Toms
Floor Drum
Suspended Cymbal
4th Percussion
Bass Drum
Vibraphone
Anvil
5th Percussion
Chime
Xylophone
Glockenspiel
♪楽曲解説♪
最少24名から演奏可能!民衆の感情の起伏を想像させるダイナミックで変化に富んだ楽曲構成は聴く人に深い印象を与えること間違いなし!
東西冷戦の終結、平和と自由の象徴として、国際社会の歴史で重要な出来事の1つである『ベルリンの壁崩壊』。そのきっかけとなった『汎ヨーロッパ・ピクニック』を題材にした作品。
■作品について
1989年夏、東西冷戦下のヨーロッパで「汎ヨーロッパ・ピクニック」という事件が起こった。この牧歌的なネーミングのイベントは、後日衝撃的なニュースとなって世界をかけめぐり、それからのヨーロッパの数年間を決定づけるものになった。この楽曲は、自由を求めた東ドイツ市民が、西側への門を開きつつあるハンガリーのショプロンという街に集まり、同名の平和集会をカモフラージュにして、オーストリア経由で西ドイツに逃れた出来事をもとに作曲されたものである。
最後のF音はFreiheit(ドイツ語で「自由」)をあらわす。
楽曲は以下のエピソードを表現している。
1.東独の監視社会、ハンガリーの鉄条網撤去のニュース
1989年当時、ドイツは自由主義陣営の西独と、共産主義陣営の東独に分断されていた。共産主義陣営では市民は監視社会に置かれ、移動や思想の自由は厳しく制限されていた。また、不穏分子を排除するため、秘密警察を有する国が複数存在した。
東独では、西独に近い地域では西独のテレビ放送が届き、開放に向かうハンガリーの動向を知ることができた。ハンガリーは若き首相ネーメトのもと、共産圏でありながら国境の鉄条網を撤去し、民主化の道を探っていたのである。自由を求める東独市民たちは、ハンガリーに行けば西側に脱出できることを知った。
2.秘密警察のノック音、ハンガリーへの逃亡
政府に反抗的な態度を示す市民はシュタージ(秘密警察)から拘束される恐怖に晒された。 自由を求める逃亡者は、愛車トラバントに乗り、チェコスロバキアを素通りし、ハンガリーとオーストリアとの国境の街ショプロンへ向かう。スパイ映画さながらの決死の逃避行が敢行された。
3.逃亡者の不安
ショプロンに行き着いたものの、逃亡者はすぐにはオーストリアに出国できなかった。ハンガリーと東独とは協定が結ばれており、東独市民を簡単に共産圏以外に出国させることはできなかったのだ。
不安の中足止めをされる逃亡者に、「汎ヨーロッパ・ピクニック」計画が密かに知らされる。 それは、ハンガリー政府協力のもと、平和集会の名目のイベントを開催し、その隙に東独市民をオーストリアに逃がす計画だった。国境は、招待されたオーストリア市民のために開放されることになっていた。
4.汎ヨーロッパ・ピクニックのブラスバンド
汎ヨーロッパ・ピクニック当日。表向きの平和集会では、ハプスブルク家の末裔の演説や、ブラスバンドの演奏が行われ、飲み物や食べ物がハンガリーやオーストリア市民の参加者に供された。
5.自由への疾走
それと並行し、逃亡者たちはバスで運ばれ国境の近くに降ろされた。逃亡者たちは国境検問所に走った。検問所はハンガリー政府の命令で開放され、検問所職員たちは東独市民を意図的に「無視」した。
6.汎ヨーロッパ・ピクニック成功
国境を越えることに成功した東独市民はオーストリアに匿われ、直ちに西ドイツへの逃亡を果たした。
7.エピローグ(東独その後)
夏の終わり、ハンガリー政府は周到な準備のもと、15万を超える東独市民へ正式に出国を許可した。混迷する東独政府は国家元首ホーネッカーが退陣。移動の自由を求める東独市民を慰撫するため、 国外旅行規制の緩和を決定するが、報道官シャボフスキーによって、旅行の許可は「ただちに、遅滞なく」発行されると誤って発表されてしまい、東ベルリン市民は国境地帯に殺到。検問所はなし崩し的に開かれ、ベルリンの壁は有名無実化された。
翌年東独は西独に編入され、ドイツは再統一を果たした。
(鹿野草平)
「まるで劇伴音楽!場面展開に引き込まれる作品」
楽曲解説でも触れられていますが「汎ヨーロッパ・ピクニック」とは、わずか数人の人物により計画され、のちにベルリンの壁崩壊、そして東西ドイツの統一に至ったとされる歴史的な事件。そのドラマを見事に表現した臨場感溢れる展開・構成です。最も印象的な箇所は、中間部の行進曲のような曲調から突如テンポが変化し、その音楽が緊迫感のあるものへと変化する場面。大きな変化にも関わらずTrp.やTrb.はそのまま行進曲のテンポで演奏を続け、徐々にフェードアウトしていく…まさに事件当時"ピクニック"の中で、西側のオーストリアへ逃げ出した東ドイツ国民の様子を表現しているように感じます。本作には、このような音楽的な仕掛けが至る所に散りばめられていますので、史実を学びつつ、想像力を持って取り組むと、より深い学びが得られるでしょう。