オペラ「ある水筒の物語」によるパラフレーズ/伊藤康英【吹奏楽販売楽譜】
- 在庫
- 5~6営業日での発送予定
- 商品コード
- NAS-BA470
- JANコード
- 4995751822635
- メーカー
- イトーミュージック
♪詳細情報♪
演奏時間:8分00秒(約)
グレード:5
主なソロパート: Fl. / Bsn. (or T.Sax. / Hrn. / Euph.) / Siren / Chimes
Trp.最高音:1st:high B♭/2nd:As/3rd:Ges
編成:吹奏楽
販売形態:販売譜(スコア+パート譜)
▼楽器編成▼
Flutes (3 div.)
Oboes 1 & 2
Bassoons 1 & 2
Clarinet in E♭
Clarinet in B♭ 1
Clarinets in B♭ 2 & 3
Alto Clarinet in E♭
Bass Clarinet in B♭
Contralto Clarinet in E♭
Soprano Saxophone in B♭
Alto Saxophones in E♭ 1 & 2
Tenor Saxophone in B♭
Baritone Saxophone in E♭
Trumpets in B♭ 2 & 3
Horns in F 1 & 2
Horns in F 3 & 4
Trombones 1 & 2
Trombone 3 (or Bass)
Euphoniums (div.)
Tubas (div.)
String Basses (div.)
Harp
Percussion 1&2
3 Tom-toms
Cymbals
Syspended Cymbal
Tam-tam
Triangle / Wind Chime
Flexatone / 2 Sirens
Xylophone / Vibraphone
Marimba / Chimes
Steel Pan (or Vibraphone)
Celesta (opt.)
♪楽曲解説♪
〈静岡でオペラを〉
2017年9月のとある日、たまたま点けたラジオから、「たった一人の慰霊祭」と題された話が聞こえてきた。それは、日米戦没者の慰霊を続ける静岡の医師・菅野(すがの)寛也先生の話だった。
1945年6月20日未明の静岡大空襲の際、2機のB29が衝突して23名のアメリカ兵が亡くなった。そのときのたったひとつの遺品が「黒焦げの水筒」。菅野先生は、亡くなってしまえば敵味方もない、と、日本兵のみならず、アメリカ兵への追悼を、その水筒を使って毎年行っていらっしゃるとのこと。そして、第二次世界大戦の発端となったハワイの真珠湾にも出かけ、当初はたったひとりで慰霊祭を行ったが、今では、「Blackened Canteen Ceremony(黒焦げの水筒慰霊祭)」が毎年12月6日早朝に行われているとのこと。おそらくそれが、2年前のオバマ大統領と安倍首相のハワイ訪問につながったのだろうという話を聞くに及んで、この「黒焦げの水筒」のエピソードを元にした音楽作品を書きたいとの思いに駆られた。
〈平和をテーマにした作品〉
これまでにこんな曲を書いてきた。
吹奏楽のための序曲「平和と栄光」(2001年)
ピース、ピースと鳥たちは歌う(2018年)
カザルスの国連でのスピーチとともに演奏したカタロニア民謡「鳥の歌」に基づく。21世紀が平和な世紀でありますようにとの願いをこめて作曲。
コラール幻想曲(2002年)
コラール前奏曲「おお、人よ、汝の罪の大いなるを嘆け」による幻想曲(2013年)
2001年9月11日のニューヨークでのテロを受けて作曲。
交響的カンタータ「展覧会の絵」(ムソルグスキー作曲の「展覧会の絵」に基づく合唱付きの編曲)(2005年)
…戦争と平和にまつわるさまざまな言語の詩を合唱が歌う。
彼がわたしたちに語ったこと バリトン、ソプラノと吹奏楽のために(2015年)
彼がわたしたちに語ったこと バリトンと吹奏楽のために(2016)
バリトン独唱版は、2018年5月、「テーマは平和」と題して行われたクードヴァン国際吹奏楽作曲コンクールにて入賞。なおこのコンクールのテーマ設定は、2015年11月のパリでのテロを受けてのもの。この「彼がわたしたちに語ったこと」という作品ではブッダの言葉を用いた。
怨みに怨みで報いたら、怨みが止むことはない。怨まないことで怨みは止む。
このブッダの言葉は、1951年のサンフランシスコ平和条約の会議の場で、当時のセイロン(現・スリランカ)のジャヤワルダナ大使が引用した言葉として知られる。この言葉があったから今の日本があるといっても良いかもしれない(なお、実際のスピーチでは、「愛によって(by love)怨みは止む」と語られたが、ブッダの言葉に正しく言うと、「怨まないことで」となる)。
この言葉は、平和に向けての大切な一言だと思う。しかし一体、どうやったら「怨まないこと」ができるのだろう。そう思っていたところ、偶然にも菅野先生の言葉に出会ったのだった。菅野先生は言う。
謝罪ということはものすごく難しい。かえって恨みつらみに火をつけることがあるかもしれない。
敵味方の隔てなく追悼すること。追悼なくして平和への道はない。
こういった菅野先生の言葉に感銘を受け、そこで、これまで平和に向けて書いて来た作品の集大成として、オペラ作曲に取り組むこととした。
〈吹奏楽版〉
このオペラを少しでも多くの人に知ってもらいたいと考え、吹奏楽による小品を作った。それがこのパラフレーズである。創価大学パイオニア吹奏楽団の委嘱により、2019年7月20日完成、同年度の吹奏楽コンクールにて作曲者の指揮により披露され、同年10月26日には全国大会にて演奏された。
〈演奏のアドヴァイス〉
第15小節のソロは、バスーン、テナー・サクソフォーン、ホルン、ユーフォニアムなど、さまざまな楽器で演奏して良い。また、場合によっては複数の楽器を組み合わせても良いだろう。
サイレンを2台使用している。余韻が完全に消え去るまで待つこと。サイレンの減衰には、30秒ほどかかるものを推奨する。
第189小節の金管楽器は、練習用の消音ミュートを使用する。ほとんど聞こえない効果を狙っている。
最終小節は、打楽器の音(特に鍵盤打楽器による変ト長調の和音)のみが残ることとなる。理想としては、自然に消えるまでの長いフェルマータを保ちたい。
(伊藤康英)