
阿部勇一「超絶技巧練習曲」シリーズ初の五重奏作品。無調の響きと緩やかなパッサカリアの対比に叙情的中間部が彩りを添える快作です。
楽曲詳細情報
- 作曲
- 阿部勇一(Yuichi Abe)
- 演奏時間
- 4:50
- グレード
- 4.5
- 編成
- クラリネット5重奏
楽器編成
- 1st Clarinet in B♭
- 2nd Clarinet in B♭
- 3rd Clarinet in B♭
- 4th Clarinet in B♭
- Bass Clarinet in B♭
楽曲解説
この曲は、長崎県「アルビオン・クラリネット・ヴァリエ」様の依頼で2010年から書き進めている「クラリネットのための超絶技巧シリーズ」の第十一番です。今回は、代表の升谷氏が所属する別団体「アンサンブル・ラフォーリア」様の委嘱となります。シリーズ初の五重奏、全体的にセリーを使った無調性の曲ですが、中間部などはパッサカリア形式を用いて少し叙情的な雰囲気も出してみました。
今回もかなり「超絶」というより無茶な音運びですが、ゆっくりな部分も比較的多く、このシリーズを1度でも取り組んだことのある方々であれば、カタチを作りやすい作品だと感じて頂けるのではないでしょうか。
緩急さまざまな部分がありますが、各々の場面でどのような雰囲気を醸し出すのか、奏者同士で共通したイメージを持つことが大切だと思います。遅い部分は空気感を大切に、激しい部分は力任せにならないよう丁寧に且つ鮮やかに。また、ダイナミクスについて言うと、例えば「f」には「mf」とは書けない「f」もあれば、「ff」とまではいかない「f」もあります。ひとつのダイナミクスにも音量やイメージは何通りもあるということを意識し、「f」=「強い」、「p」=「弱い」だけにならないよう表現を工夫すれば、即興的で無機質な曲にドラマチックな奥行きが生まれてくると思います。・・・と口でいうのは簡単ですが(笑)・・・第11番にも名演が生まれることを期待しております。
(阿部勇一)